「道をひらく」松下幸之助 ㊿+27
・勤勉の徳
天災地変をまつまでもなく、粒々辛苦の巨万の富も、事あらば一朝に
して失われてしまうことがしばしばある。形あるものはいつかは滅び
るにしても、まことにはかない姿であるといえよう。
だがしかし、身についた技とか習性とかは、これは生あるかぎり失われ
はしない。たよりになるのは、やはり自分の身についた技、身についた
習性。
だから、何か一つでもいいから、よき技、よき習性を身につけたいもの
であるが、なかでもいわゆる勤勉の習性は、何にもまして尊いものに
思われる。
勤勉は喜びを生み、信用を生み、そして富を生む。人間のいわば一つの
大事な徳である。徳であるかぎり、これを積むには不断の努力がいる。
相撲に強くなるためには、不断に真剣なけいこを積まねばならない
ように、勤勉の習性を身につけるためには、まず日々を勤勉につと
める努力がいるのである。その努力が重なって勤勉の習性が身につき、
その習性からはじめて徳が生まれてくる。
おたがいに勤勉の徳を積みたいものである。
● 天災地変
自然界の変動によって起こる災害や異変など、さまざまな災いを指す
言葉です。 天災地変も暴風や落雷、竜巻、地震などの災害を意味します。
2022/05/26
● 粒々辛苦
穀物の一粒一粒は、農民の苦労と努力の結果実ったものであること。
● 習性
● 後天的
● 不断
とだえないで続くこと。また、そのさま。「―な(の)努力」
この続きは、次回に。