「道をひらく」松下幸之助 ㊿+39 最終
・ダムの心得
雨が降る。山に降る。降った雨は地にしみこみ、谷水となり、川となり、
平野をうるおして海に流れる。この流れがうまくゆけばよいけれど、
ちょっと狂えば洪水となり、また反対にかんばつとなる。流しっ放し、
使いっ放しの結果である。
そこでダムを考える。流しっ放しをせきとめて、せきとめ溜めたその
水を有効に使う。ゆとりをもって適時適切に放出する。人間の知恵の
進歩であろう。
川にダムが必要なように、暮らしにもダムがほしい。物心ともにダムが
ほしい。ダラダラと流れっ放し、使いっ放しの暮らしでは、まことに
知恵のない話。
大河は大河なりに、小川は小川なりに、それぞれに応じたダムができる
ように、人それぞれに、さまざまの知恵を働かせれば、さまざまのダム
ができあがるはずである。
個人の暮らしの上だけではない。商売の上にも、事業の経営の上にも、
このダムの心得がぜひほしい。そしてさらに大事なことは、国家の運営
にあたっても、このダムをぜひつくりたい。国家と国民の安定した真の
繁栄のために。
・日本よい国
花が散って、若葉が萌えて、目のさめるような緑の山野に、目のさめる
ような青空がつづいている。身軽な装いに、薫風が心地よく吹きぬけ、
かわいい子供の喜びの声の彼方に、鯉のぼりがハタハタと泳いでいる。
五月である。初夏である。そして、この季節にもまた、日本の自然の
よさが生き生きと脈うっている。
春があって夏があって、秋があって冬があって、日本はよい国である。
自然だけではない。風土だけではない。長い歴史に育まれた数多くの
精神的遺産がある。その上に、天与のすぐれた国民的素質。勤勉にして
誠実な国民性。
日本はよい国である。こんなよい国は、世界にもあまりない。だから、
このよい国をさらによくして、みんなが仲よく、身も心もゆたかに
暮らしたい。
よいものがあっても、そのよさを知らなければ、それは無きに等しい。
もう一度この国のよさを見直してみたい。そして、日本人としての誇り
を、おたがいに持ち直してみたい。考え直してみたい。
● 薫風
薫風(くんぷう)とは初夏の若葉や青葉の香りを含んだ穏やかな風。
読み下して「風薫る(かぜかおる)」とも。初夏の時候の言葉。
● 天与
天から与えられるもの。天のあたえ。
雨がふれば 人はなにげなく 傘をひらく
この 自然の心の働きに その素直さに
私たちは日ごろ あまり気づいていない
だが この素直な心 自然な心のなかにこそ
物事のありのままの姿 真実をつかむ
偉大な力があることを 学びたい
何ものにもとらわれない 伸びやかな心で
この世の姿と 自分の仕事をかえりみるとき
人間としてのなすべきこと 国としてとるべき道が
そこに おのずから明らかになるであろう
今回で、最終となります。
明日からは、書籍「続 道をひらく」をご紹介したいと思います。
日々、これをスマホで読みながら「仕事」を開始しております。
いろいろと考えさせられ、「松下幸之助」の人間としての大きさを
感じました。
書籍「続 道をひらく」もお時間がありましたら、是非、ご覧いただき
たいと思います。
2023年6月7日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美