続「道をひらく」松下幸之助 ㉟
○ 水無月(みなづき)
● 降らば降れ
小さな白い花が、静かに雨に打たれていた。何の花かは知らないが、
シトシトと降る雨に、キラキラ光りながら、緑の葉先からポトリポト
リとしずくをおとしている。その可憐な姿にフトした心の安らぎを
おぼえる。
降らば降れ、吹かば吹け。降るときは雨にぬれ、吹くときは風にそよぐ。
しかしその根は、しっかりと大地に張っている。ささやかな根であって
も、大地にしっかり張っている。
降らば降れ、吹かば吹け。雨も風もいつかはやむ。やめばまた頭をも
たげる。雨に洗われ風に磨かれて、花はあくまで白く、その葉はあく
までも緑に、また毅然として咲き誇るであろう。
小鳥がツイととび去っていく。どこにいたのか。姿は見えなかったが、
やっぱり小鳥もいた。
雨がやめば、その小さな羽根をパタパタふるわして、力いっぱいチイ
チイとさえずりまわるであろう。
降らば降れ、吹かば吹け。自然とともに生きる花よ小鳥よ。
人間もまたやがて狂奔の日々をかえりみて、自然とともに歩む道を探し
求めるであろう。
● 可憐
姿・形がかわいらしく、守ってやりたくなるような気持ちを起こさせ
● 狂奔
1. 狂ったように走りまわること。
「ひづめに火花を散らして、まっしぐらに―する」〈芥川・偸盗〉
2. ある目的のために夢中になって奔走すること。「資金集めに―する」
この続きは、次回に。