続「道をひらく」松下幸之助 ㊼
● 成るものは
成るものは成るし、成らぬものは成らぬ。わかりきったことのようだが、
これがなかなかわからない。
だからつい成らぬものでも成ると思いこみ、あれこれ思案をし、策を
ろうする。
その果ては不平や不満、グチに摩擦、自分も心暗ければ、周囲も暗然。
自他ともに傷ついてまことに住みにくい。
成らぬものを成らしめようとするからである。
成らぬものは成らないが、成るものは成る。策をろうせずとも成るも
のは成る。
ムリもいらない。思案もいらない。策もいらない。ただ素直な精進が
大事なのである。思いをこめて、心をこめて、よき知恵を生み出し、
よき工夫を生み出す。そのひたすらなる精進が、成るものをして成ら
しめるのである。そしてそこには自他ともの喜びがある。
やすらぎがある。
次々と事の多いこの世の中、この人生。心静かにもう一度反省して
みたい。
成るものは成るし、成らぬものは成らぬ——–。
● 成る
「ついに五連覇が―・る」「念願―・って一人立ちする」
● 暗然
悲しみ、絶望などで心がふさぐさま。気落ちするさま。
● 精進
一つのことに精神を集中して励むこと。一生懸命に努力すること。
「研究に―する」
この続きは、次回に。