続「道をひらく」松下幸之助 ㊿
● 耳を傾ける
よく聴こうと思えば、自然に身体が前に出る。耳を傾ける。耳を傾け
れば、一言一句がシンシンと胸にしみわたって言外の言すらも、聴こ
える思いがする。
だから、人の言葉が、わが身の血となる。肉となる。血となり肉と
なって、心ゆたかに更に新しい知恵がわく。
人の言に耳を傾けない態度は、みずから求めて心を貧困にするような
ものである。どんな賢人でも、その人ひとりの知恵には限りがあって、
だから自分の知恵才覚だけで事を運べば、考えがかたくなになる。
視野がせまくなる。
世のなかのあわただしさに追われて、事を急ぐあまりに、ともすれば
ひとりの知恵、ひとりの判断で事を処しがちなきょうこのごろである。
しかしやはり、他人の事はよく聴きたい。どんな人の言葉も、どんな
人の考えも、それが真剣であればあるほど、身をのり出すほどの思いで、
よく聴きたい。人よりも二人に、二人よりも三人に、できるだけ多くの
人から、できるだけ多くの話を聴いて、そしてわが心を養い、わが知恵
を誤りなくゆたかにしたい。
■ 一言一句
一つ一つの言葉。
■ 言外
この続きは、次回に。