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ドラッカーとの対話  未来を読みきる力 36

● ドラッカー名言録その14 「中小企業の経営者は机に縛りつけられていてはいけない」

 

「中小企業の最高経営責任者は、他のだれにも任せることのできない次の2つの課題に

取り組む時間を持てるよう、自分の職務を構成しなければならない。

 

1つは、外部向けの時間、すなわち、顧客、市場、技術を研究するための時間であり、

もう1つは、内部(外部)の主要メンバーとじっくり会うための時間である。

間違っても机に縛りつけられるようなことがあってはならない」

この言葉は、やや長いが、スモール・ビジネスの経営者にとってきわめて大事なアドバイスを

包含している。ドラッカーがかねてから強調している、企業は「外部」によって

活かされていること、したがって絶えず「表の風」に吹かれよということが、1つ目の、

外部向けの時間に関する主張となって表れている。

その一方で、組織運営に当たっては、自ら社内のキーとなるスタッフのところに出向く

ことの大切さを強調し、現場に赴けと勧めている。

とくに中小企業の場合は、大企業と違って、人と金の両面で限られた資源しか持っていない。

そのため、成果をもたらす分野に確実にその資源を投入して事業を展開しなければならない。

それゆえ中小企業のトップは、現場の動きを鋭く察知し、独自の情報収集・処理、そして

管理方式を用いなければならないとドラッカーは力説している。

そのひとつとして、通常は、「外部」に目を向けろとやかましく説くドラッカーも、

中小企業に関しては、主要メンバー全員に関するこまかいリサーチを勧める。なぜなら、

その野心、願い、思考様式と行動様式、強味と限界、過去の業績と将来性について

よく知っていることが、中小企業にとっての強味となるからである。

そしてこの利点をフルに活用せよと述べている。

しかし、そうしたリサーチをするためにはトップは自由な時間を持たなければならない。

つまり、用向きの定まっていない時間、「問題」の処理にわずらわされない時間を持つことが

肝要であると指摘するのである。

 

● ドラッカー名言録その15 「人間というものは、非常に時間を消費するものであり、

    そして大部分の人間は時間の浪費家である」

 

ドラッカーは随所で時間について言及しているが、とくに有名なのは、「時間は経営者にとって

最も重要な資源である」という言葉である。

この考え方に基づいてドラッカーは、従来のマネジメントの3要素であった「ヒト・モノ・カネ」を

変更して、「ヒト」「シラセ(知識・情報)」「トキ(時間)」の3つに新たに絞り、大事な

マネジメント・リソースとして折に触れて強調している。

ドラッカーは時間に関して、「人間の決定が非常に時間を費やすものであるのは、

神が人間というものを、組織のための特定の資源として創造しなかったという簡単な

理由による」と発言している。

それだからこそ、何かを達成しようとしたら、しかもひとりでなくチームや

グループで達成しようとしたら、一に集中、二に集中—–だと強調するのである。

人間という、この扱いにくい存在の持つあらゆる能力をひとつの業績達成に振り向けるには、

焦点を絞り、集中しない限り不可能だと言ってやまないのである。

 

● ドラッカー名言録その16 「知識労働者自身に上下はない」

 

知識労働を中心とした組織は、権威や権力志向の組織ではなくて、課題解決や目的によって

規定されるべき業績志向型組織でなければならないという。

さて、ドラッカーは知識労働者について、もうひとつ大事なことを説いている。

それは、優れた仕事をするためには、常に努力をしなければならないという点についてである。

「ようやくできた」とか「辛うじて成しとげた」などという言い方は、知識労働では

意味を持たない。いつも腕の冴えを示せることが、卓越した知識労働者のあり方なのだ。

そして、仕事への貢献度を高めることを絶えず意識の最先端へおいて、腕を磨くことを

片時も忘れてはならないと言う。

したがって知識労働者の動機づけは、その効果性、つまり仕事でどれだけ効果をあげることが

できるかということに依存するところが大きいとする。

知識労働者自身に当を得た意思決定をさせるためには、トップは、その課題をこなすことで

いかなる成果があがるか、またどういうやり方でそれを達成すべきかを本人によく

知らせておかねばならない。

自分の知識と技能と作業が、いかに企業全体に寄与するのかがわからなければ、自分自身を

マネジしたりもティベート(動機づけ)しえないからである。

それゆえ、知識労働者が非常に立派な業績をあげている組織では、どこでもトップが

一定の規則的なスケジュールに従って、とくに時間を割いて知識労働者たちとテーブルを囲んで座り、

くつろいで話し合っていると指摘している。

 

この続きは、次回に。

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