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ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ②

目次

 

はじめに

 

Part1  今必要な世界最先端の経営学

 

第1章    なぜビジネススクールでは最先端の経営学が学べないのか

本章では経営学の現状を紹介しながら、「なぜビジネススクールでは、世界最先端の経営学が

学べないのか」という疑問をひもときたいと思います。

そこから。本書の意義もお分かりいただけるはずです。

そのとっかかりとして、ビジネススクールで使われる「MBAの教科書」の話題から始めましょう。

 

✔️ 長い間進歩していないMBAの教科書

 

私は米国では、「経営戦略論」という科目を教えていました。

経営戦略論はほぼすべてのビジネススクールにある主要科目で、MBAや学部向けに、様々な

教科書が世界中で出版されています。そして、この経験を通じて分かったことがあります。

それは、経営戦略論の教科書は、どれも中身に大差がないということです。

そして、その内容はおそらく四半世紀近く、ほとんど変わっていません。

そして何より重要なのは、そこで紹介される基本ツール、コンセプトの大部分を、現在の経営学者が

ほぼ研究対象としていないということです。

欧米の上位・中堅のビジネススクールでこれらの教える教員は、その多くが「経営学者」です。

彼らは日頃は学者として「ビジネスの研究」をしています。

それなのに、これらの教科書で紹介される分析ツールは、現代の経営学ではほぼ学者の研究対象に

なっていないのです。すなわち現在の経営学者では、「経営学者(=ビジネススクールの教員)が授業で

教えていることと、彼らが今最前線で研究で得ている知見の間に、きわめて大きなギャップが

存在する」のです。ポーターがこれらの分析ツールを記した著書『Competitive Strategy』を

出版したのは、1980年のことです。

バーニーがVRIO分析の基礎となるリソース・ベースト・ビューの有名な論文を書いたのは、1991年です。

それから四半世紀が経ち、経営学者は研究を通じてさらに新たな知見を得ていないはずなのに、

それを伝えるべき教科書は、主要な内容がほとんどアップデートされていないのです。

なぜ、このような状況になるのでしょうか。

その背景をご理解いただくために、世界の経営学の現状を紹介させてください。

私は、現代の経営学を把握するポイントは、二つあると考えています。

 

VRIO分析』

「価値があり(Valuable)」「希少で(Rare)」「模倣が難しく(In-imitable)」

「組織的である(Organization)」の略称。

 

Competitive Strategy

翻訳書は、『競争優位の戦略』(ダイヤモンド社、1985年)

 

✔️ 経営者は急速に国際標準化している

 

第一は、国際標準化です。

経営学の国際標準化の流れを受けて、いまアジア各国では、国際レベルで通用する経営学者の国境を

越えた引き抜き合戦が激しくなっています。特に中国・香港や韓国・シンガポールの大学の勢いは

凄まじく、その教員になるためには欧米のトップスクールで博士号を取っていることが基本条件で、

加えてかなり高い研究業績が求められています。

欧米の主要大学で教員経験のある方も数多くいます。

また、欧米の著名研究者が、自国でよりもはるかに高い報酬や恵まれた研究環境を条件に、

中国や香港・シンガポールの大学に引き抜かれています。

この勢いは、さらに加速していくでしょう。

 

✔️ 急速に進む経営学の化学化

 

経営学を読み解く第二のポイントは、科学化です。

世界の経営学は社会科学の側面を重視しています。

科学とは真理を探究することですから、世界の経営学では(大変難しいことではありますが)、

「経営の真理法則を科学的に探究する」ことが目指されています。

そして、この「科学を目指す経営学」が世界規模で急速に普及し、世界中の経営学者により、

新しいビジネスの知が日々生み出されているのです。では、それだけの知が生み出されているのに、

なぜMBAの教科書は長い間代わり映えがしないのでしょうか。

なぜビジネススクール教育に、その知見が十分に反映されないのでしょうか。

この謎を解き明かすために、図表1-2をご覧ください。

 

図表1-2  経営学者の知見が実務に影響を与える二つのルート

 

①  経営学の知見(経営学者が研究を生み出す)→経営の現実、実務

②  経営学の知見(経営学者が研究を生み出す)→ツール化(ファイブ・フォース、ブルー・

     オーシャンなど)→経営の現実、実務

 

※   図表1-2は、省略致しますので購読にてお願い致します。

 

 

この続きは、次回に。

 

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