お問い合せ

書籍「すごい物流戦略」 アイリスオーヤマ ②

・ 永遠に存続するために、顧客と市場を創造する

 

下請け時代の大手企業との厳しい交渉、独立したメーカーへの第一歩を

踏み出した自社製品開発(イノベーション)、「好況のときは味方、不況に

なると敵になる」問屋の学び、取引先のニーズに合わせた自らの業態変換—–

現在のアイリスオーヤマはここまでのさまざまな経験を糧にしてかたち

作られています。また、大山社長はこうした経験から学んだことを念頭に、

アイリスオーヤマの企業理念を作っています。

 

アイリスオーヤマの企業理念は、

 

1. 会社の目的は永遠に存続すること。

    いかなる時代環境に於いても利益の出せる仕組みを確立すること。

 

2. 健全な成長を続けることにより社会貢献し、利益の還元と循環を図る。

 

3. 働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、

    社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり。

 

4. 顧客の創造なくして企業の発展はない。

    生活提案型企業として市場を創造する。

 

5. 常に高い志を持ち、常に未完成であることを確認し、革新成長する

    生命力に満ちた組織体をつくる。

 

というものです。大山社長はことあるごとに、企業が成長し、長く存在

していくためには企業理念の共有が大切だと述べています。

企業理念の共有と合わせて、よく語られるのが、同社の人事制度です。

同社の人事制度は「年功を拝し、実力主義」です。

「勤続年数に見合う定期昇給の考え方はなく、自分の給与は自分で上げる

のが大原則」ということが社内に徹底されています。

また評価の不平等感をなくすため、「360度評価」や人事評価委員会と

いう横断的な組織による評価方法をとっています。

 

・週1で行なうプレゼン会議から、年間1000点の新商品が生まれる

 

アイリスオーヤマでは、年間1000点の新商品を開発しています。

1日平均で考えると約3点、これをみても、同社の新商品開発力がどれだけ

ものすごいのか、よくわかると思います。

現在、同社が扱う商品数は約1万6000点あります。

この1万6000点をSCM(サプライチェーンマネジメント)として見た場合、

これだけのアイテムの動きをコントロールするのは至難の業です。

メーカーベンダーであるアイリスオーヤマだから実現できることだと

思います。

アイリスオーヤマでは新商品開発に対して独自の数値目標を掲げています。

同社では「発売後3年以内」の商品を「新商品」として定義していますが、

全社売上高に占める新商品の比率を目標値としています。

1998年に50%を超え、2013年以降は目標を6割以上に引き上げました。

普通の企業であれば、経営の安定化を図るために「ロングセラー商品を

どれだけ持てるか」ということに重きを置きます。

しかしアイリスオーヤマではロングセラーに頼らず、たえずヒット商品の

新陳代謝を図っていくことで経営の安定化、さらなる成長を目指している

のです。

 

・マーケット調査を行わない理由

 

アイリスオーヤマの毎週のプレゼン会議では60件もの新商品の企画が

提案されるということを前に述べました。

もちろんその中身は「数撃ちゃ当たる」「枯れ木も山のにぎわい」では

ありません。新商品を開発するにあたっては「ストーリー」と「コンセ

プト」が大切になるということが、社内で共有されています。

 

例えば、ホームセンター向けの商品を企画するという場合、女性が選ぶ

視点、女性に好かれるということを重要視します。

まず、顧客は必ず商品を比較して購入するかどうかを決めます。

そしてその商品によってどれだけ便利になるか(利便性)、その結果、どれ

だけ満足につながるかというストーリーを考えていくのだそうです。

自分たち生活者の視点でわかること、理解できることが基準になるのです。

ですから同社では、コストをかけたマーケット調査というものは行ない

ません。

「マスを対象にリサーチしてもだいたいニーズは同じものになり、そこ

から潜在需要はわからない」という考えが根底にあるからです。

マーケット調査をしてわかることは、他社がやっても同じ結果になるわけ

ですから、そこから商品を開発しても、同じ市場に複数の会社の商品が

出回ることになり、それだけ競争も激しく、売上げ増につなげることも

難しくなります。

「池に10匹の金魚がいて、10人でその池に行けば、1人1匹しか手に入ら

ない」という理屈です。

 

もう1つは「マーケットイン」の発想です。

 

技術力に優れたメーカーにときどき見受けられることですが、作り手の

自己満足で、「今の技術があればこれだけのことができます」というよ

うな商品を開発することがあります。

一部のアーリーアダブター(初期採用層)には喜ばれるかもしれませんが、

多くの場合、「開発者の思い込みはいらない」「余分な機能はいらない

から、シンプルなものにしてほしい」という市場からの反応をもらうことに

なります。これがプロダクトアウトからの発想です。

それに対してマーケットインの発想というのは、単純に生活者からの発想、

どんな利便性があるのか、どんなに便利になるのか、というシンプルな

視点から商品開発につなげるという考え方です。

 

 

 

この続きは、次回に。

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