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書籍「すごい物流戦略」オムニチャネルと物流戦略⑦

● 宅配ロッカーで再配達問題を解決できるか

 

EC専業が物流センター在庫から届けるという場合の受け取り方法にも

新しい動きが出ています。

その前に過去の壮大な失敗事例についても触れておきたいと思います。

 

1996年に米国でオンラインのスーパーマーケット事業をスタートした

「ウェブバン」というベンチャー企業がありました。

1999年に株式上場により巨額の資金を調達し、当時としては最新鋭の巨大

物流センターを建設する一方で、配送トラックを購入して、ドライバーを

雇用、自前の配送網を構築しようと考えていました。

しかし、同社には物流ノウハウもないうえ、十分な顧客獲得にも至らない

まま広域での配送を試みたため配送効率も悪く、2000年にドットコム

バブルがはじけると同時に、事業が行き詰まり、そのまま経営破綻への

道をたどりました。

このウェブバンに先んじること1年。1995年に米国アマゾンがネット書店と

して事業を開始しました。現在のアマゾンを見れば、同社がいかに物流を

重要視しているかがわかりますが、立ち上げ時はウェブバンのように先を

急がず、品質管理がさほど難しくない書籍で物流のノウハウを修得しな

がら、事業を拡大していきました。物流システムに対する見通しの違いが、

今日の状況をもたらしたといえると思います。

現在アマゾンは、最短1時間配送のアマゾンプライムナウ、ネットスー

パーのアマゾンフレッシュの展開において、小商圏での顧客獲得と高い

配送密度の実現を基本に、展開エリアを着実に拡大しています。

また米国内では受け取り拠点としてのアマゾン・ロッカーの設置にも早く

から着手しています。

 

日本ではEC市場の急成長にともなう宅配便の急増により、欧米にはない

「再配達問題」への対応が大きな関心事になっています。

 

このプロジェクトから生まれたスマホアプリが、現在10万人以上に利用

されている再配達問題解決アプリ「ウケトル」です。

この「ウケトル」により2割近い再配達の削減効果が得られています。

アプリ以外の再配達を削減する方法としては、国も力を入れている「公共

宅配ロッカー」があります。ヤマト運輸、佐川急便、DHL、順豊エクス

プレスに対応した「PUDOステーション」、日本郵便の「はこぽす」、

楽天市場専用の「楽天BOX」、セブン-イレブンとヤマト運輸が共同で

設置する「宅配ロッカー」ですが、それぞれ使い方はバラバラ、ECサイト

からの受け取りロッカーの選択も統一されていないので、現在の利用率は

散々なものですし、このままでは将来にわたっても、なかなか浸透して

いかないでしょう。私は、以前から、共通プラットフォームとして、全社の

宅配ロッカーや、受け取り可能なコンビニなどの店舗をすべて網羅した

地図システムを作ろうと提唱してきました。

宅配ロッカーに対する助成金が国土交通省で2017年に始まりましたが、

この一部を使えば、地図システムができ、宅配ロッカーやコンビニ受け

取りが、もっと普及するでしょう。

EC市場では世界最大の中国はというと、各地に大きな受け取りセンターが

設置され、購入者はそこまで商品を受け取りに行くというのが一般的に

なっています。

 

 

この続きは、次回に。

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