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書籍「すごい物流戦略」オムニチャネルと物流戦略⑨

● 「店舗からの配送」方法も、小売と宅配業者の提携で多様化

 

米国では、店からの配送を代行するベンチャー企業も生まれています。

2012年に創業された「デリブ」と2011年創業の「ポストメイツ」が特に

有名です。

 

「デリブ」はショッピングセンターやメイシーズといった百貨店などと

提携し、「シップ・フロム・ストア」(店舗からの配送)を代行しています。

「ポストメイツ」はスターバックスの宅配サービスをはじめファースト

フードやレストランなどの調理済み料理のデリバリーが8割を占めていま

すが、ドラッグストアのウォルグリーンや食品スーパーなどからの配達も

代行しています。

2018年4月にはウォルマートのデリバリーサービスを一部都市で代行する

提携を結びました。

 

買い物代行サービスとして実績をあげているのが、「インスタカート」。

ネットで注文された商品を、インスタカードと契約する配達員が提携先

店舗に自分の車で行って店内で商品を購入し、お客さんの手元に届ける

というビジネスモデルを展開しています。

高級食品スーパーのホールフーズは、インスタカートと契約し、専用の

レジ、保管場所を設けるほど密接な関係を築いていましたが、2017年

8月にアマゾンに買収され、インスタカートとの関係がどうなっていく

のか気がかりです。

 

日本では、コンビニと宅配事業者との提携が進んでいます。

2015年6月、コンビニエンスストア大手のローソンと、佐川急便を傘下に

持つSGホールディングスとの合弁で「SGローソン」が設立されました。

既存のローソン店舗のバックヤード(倉庫)を配送拠点都市、SGローソンの

スタッフが専任担当者(パーソナルアドバイザー)となり、店舗から半径

500m圏内の世帯を対象に、専用の台車や自転車を使って、現在のところ

佐川急便の宅配便の配送を代行しています。

将来的にはローソン店舗での取り扱い商品の御用聞きを行なっていく計画で、

店頭商品のほか、成城石井、大地を守る会(オイシックスドット大地)等の

商品を含む、食品スーパー並みの品揃えから注文が可能になるようです。

2017年4月には、コンビニエンスストア最大大手のセブン-イレブンが宅配

サービスで、西濃運輸を傘下に抱えるセイノーホールディングスと業務

提携し、セブン-イレブン専用の宅配代行会社として「GENie(ジーニー)」を

設立しました。

主に地域の主婦を「ハーティスト」と呼ぶ配達員としてパート契約し、

加盟店の宅配サービス、御用聞き、高齢者見守り活動等を行います。

カバーエリアは店舗の周囲500 mから1km圏内で、加盟店ごとに区分けが

されています。

 

● 中国のスーパーでは、ネット注文された商品を

 忙しくピックアップする宅配業者の姿が

 

中国では、ジャック・マー会長が率いるアリババグループ、ネット企業の

テンセントと京東商城(JDドットコム)の2大グループそれぞれが、リアル

店舗を展開する大手流通業との資本提携を積極的に進めています。

 

アリババグループ運営の生鮮スーパー「盒馬鮮生(フーマーシェンション)」は

オムニチャネルを地でいっている店舗で、スマホアプリ経由でネット注文すれば、

3km以内の商圏には30分以内に自宅までバイクで宅配を行なっています。

IT技術を駆使してルート最適化やピッキングの人員配置などの経営効率化を

図り、30分での配送を実現しており、ネット注文による宅配での売上げが

主体になっているそうです。

 

盒馬鮮生は、現在、北京、上海などに40店舗近くを出店しています。

先日、中国北京で、ある流通チェーン店向けに全中8ヵ所同時生中継で

講演をした際に、イトーヨーカ堂が撤退した跡地に居抜き出店した盒馬

鮮生の店内を見てきました。会員制で運営されていますが、店内の光景は

日本の食品スーパーと明らかに活気が違っています。

その差は何かというと、宅配用のピッキングをしている人の数が圧倒的に

多く、天井にはコンベアが流れており、ピッキングした商品はそのコン

ベアを通じて、配送のピックアップ場所にどんどん流れていっているから

です。商品をピッキングしている姿は、日本のネットスーパーのそれと

比べれば少々荒っぽいかもしれませんが、利用者がどんどん増えている

わけですから、それだけお客さんからの満足度も高いということでしょう。

店内で販売している生鮮品は、所定の料金を支払うと店内調理してもらえ、

そのまま施設内で食べることもできます。

私も、ロブスターとカニをボイルしてもらい、昼食代わりにしました。

新鮮ですから味も抜群です。

この日、イベントで賑わう店内を見ていて気になったのが、店舗スタッフが

おそろいで着ているTシャツに書かれた「12.12」です。

中国ではアリババグループが、最近、毎年、11月11日(ダブルイレブン)を

「独身の日(シングルデイ)」として一大セールを行なっていますが、

「12.12」は今アリババが力を入れている新記念日だということでした。

このことから、現在11月11日に集中している物流量を、新たな記念日を

作ることで、分散、平準化を図ろうとしていることが読み取れました。

「力ずくででも変えていく」という強い意志が感じられました。

 

中国のイオンでも、盒馬鮮生同様、店舗在庫からの宅配サービスを提供

しています。ここではアリババのライバルである、京東商城(JDドット

コム)のサービスを利用し、「5キロ圏内を30分以内で届ける」とうたって

いました。

イオンの入っている施設で気になったのが、ヘルメットをかぶった人たちが

何人も店内を忙しく歩き回っていることでした。それだけ店舗在庫からの

宅配サービスを利用している人が多いということと、30分以内に届けないと

評価が下がるということから、ムダな時間はできるだけ減らしたいという

ことなのでしょう。中国では、評価が下がると行政サービスを受けられ

なくなるというペナルティがあり、「それは何としても避けたい」という

気持ちが現れているようでした。

 

 

この続きは、次回に。

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