Coffee Blake-令和3年7月23日(金) ②
□ 人生のマルチステージ化
それでは、100年ライフの人生設計は具体的にどのようなものになるので
しょうか。
従来のライフプランは、「教育⇒仕事⇒引退」という3ステージを基本と
していました。
人生の前半で教育期間を終えるとフルタイムで働き、定年を迎えると
フルタイムで引退生活を送るというものです。
この3ステージの生き方を100年ライフで機能させようと思えば、金銭面の
問題を解消するためにも、仕事のステージの期間を長くするしかありません。
しかし、『LIFE SHIFT』の著者 リンダ・グラットン氏は、ただ単純に
長い年数働き続けるのはあまりに過酷で消耗すると述べ、ステージを
組み替えながら柔軟に自分らしい生き方を見つけていくマルチステージの
生き方を提案しています。
例えば、同時期に複数の仕事や活動に携わったり、社会人を経験して
再度大学で学び直したりなど、人生において何度もステージの移行と
変化を経験する生き方です。
今でもこのような生き方をしている人はいますが、今後はより一般的な
ものになっていき、同世代の人たちが同時期に同じようなキャリアの選択を
行うという常識は、過去のものになると考えられます。
● 有形資産と無形資産への投資が重要
また『LIFE SHIFT』では、充実した100年ライフを送るためには、2つの
資産が重要であると述べられています。
1つは、定年後に必要な有形の金銭的資産です。
もう1つは、マルチステージを生き抜くための高度なスキルや知識、
肉体的・身体的な健康、家族や友人との人間関係といった無形資産です。
有形資産と無形資産は相互にポジティブな影響を与えうるものであり、
長く生産的な人生を築くためには両方への投資を意識していく必要が
あります。
● 人生100年時代における働き方の変化
これからの働き方を考えていくうえで、押さえておきたい3つの変化を
お伝えします。
・従来の定年の概念がなくなる
経済産業省の資料の中で「昭和の人生すごろくをコンプリートする概念は
なくなった」と述べられています。
「昭和の人生すごろく」とは、年功序列の終身雇用で定年まで働いて、
定年後は年金生活という人生のことです。
国の財政的にも、「60歳で定年し、その後は年金生活」というのは、
もはや現実的ではありません。
さらに今後、定年は引き上げられ、70代後半~80歳になるとされて
います。もし80歳まで働くとすれば、今までの前提から仕事をする期間は
20年延びるわけです。
● パラレルキャリアが当たり前になる
パラレルとは「平行」という意味の言葉で、パラレルキャリアは「複数の
キャリアを並行する」ということです。
会社の寿命の短命化が進み、定年まで1つの会社で勤めあげることは稀に
なるでしょう。そして「組織」から「個人」へとキャリアの主導権が
シフトしていく中で、キャリアを自己責任で築いていくことが当たり前に
なっています。
複数のキャリアを並行することで、収入のみを目的とせず、スキルアップや
価値観のアップデート、ネットワークの構築など、キャリアの糧となる
資源を広く獲得するアクションが求められます。
● キャリアの二毛作、三毛作
これはパラレルとは異なる概念です。
人生において、2回、3回とフィールドを変えながら働くことが当たり前に
なるということです。
30歳になったら次の仕事、40歳になったら次の仕事、そして、60歳からの
転職みたいな話も、おそらく今後普通になっていくでしょう。
産業や組織が加速的に短命化し、スキルの消費期限も短くなっていく中で、
望まずとも変化が求められる時代です。
生涯1つの組織で働く、1つの分野のみで食べていく、というキャリア
プランは今後リスキーになります。
● 人生100年時代のマネープラン
平均寿命が延びれば、当然老後で必要に必要なお金も増えます。
現状から考えると、仮に年金が貰えたとしても、おそらく「雀の涙」程度の
額になることが想定されます。
期待しすぎず「貰えたらラッキー」と考え、将来に備えておく方が賢明かも
しれません。
将来に向けて金銭面で備えるためには、「稼ぐ」「貯める(貯蓄)」
「増やす(資産運用)」の3つの方法がありますが、最も有益で価値の
ある備えは、「稼ぐ力」を高めることです。
理由は、「貯める」「増やす」は、そもそも「稼ぐ」ことを前提とする
からです。
稼ぐ力を鍛えるには、「時間単価」を意識しながら働くことが重要です。
「自分は1時間当たりいくらもらえる仕事ができるのだろうか」を意識
すると、必然的に稼ぐ力をシビアに捉えざるを得ません。
私たちには時間単価を上げるために、この先どのような能力開発をして
いく必要があるのかを真剣に考えることが求められています。
● 社会人の学び直しの重要性が高まる
従来の日本では、高等教育を終えた後は仕事に従事するため教育の場から
離れるケースが一般的でしたが、人生100年時代では社会人が新たな知識や
スキルを学ぶために大学・大学院で学び直すケースも増えてくると考え
られます。なぜなら、「パラレルキャリア」や「キャリアの二毛作、
三毛作」が当たり前になると、私たちは常に自身の市場価値を意識する
必要があるからです。
市場価値とは、自分を商品として考えた時の、世の中からみた価値
(値段)のことです。
今勤めている会社内での価値ではなく、「他社からみて価値があるか
どうか」です。
市場価値が高い人材は、他社からみて魅力的な人なので、1つの会社に
依存する必要はなくなります。
一方で、市場価値は一度高めればよいというわけではなく、テクノロジーの
進化や労働市場の変化によって、求められるスキルや知識はどんどん
変わっていきます。
自分に市場価値があると思っていても、5年後には「それはもうAIで
やっているから要らない」となっている可能性もあります。
なので、市場価値を維持、または高めるために、社会人の「学び直し」は
必須になります。
この続きは、次回に。