お問い合せ

実践するドラッカー[思考編] ⑲

A lesson from P.F.Drucker

 

∵ 可能性を追求する

 

自らの貢献を問うことは、可能性を追求することである。

そう考えるならば、多くの仕事において優秀な成績とされているものの

多くが、その膨大な可能性からすればあまりに貢献の小さなものである

ことがわかる。

『経営者の条件』—-p.80


 

成果に目を向けることと同時に、焦点を合わせるべき方向がもう一つ

あります。それは、自分の内面です。内面とは、第4章のテーマである

自らの気質や強み、得意な仕事の仕方、価値観などのことです。

結局のところ、自分のもっている知識や能力をフル活用して貢献する以外

には、満足した結果を出すことはできません。

いい換えれば、自分の可能性を最大限追求することが、成果をあげる人に

求められる要件となります。

その際、注意すべきポイントが二つあります。

 

一つは、現在持っている知識や能力と、なすべき仕事があっているか

どうかです。両者がかみ合っていなければ、どんな知識も能力も無駄と

なってしまいます。

 

もう一つは、現在もっていない知識や能力の追求です。

いまの仕事、つまり、いまなしうる貢献の大きさやレベルを超えるために、

知識や能力を磨き上げることです。その結果、もっと大きな貢献を追求

できるようになります。

自らがなしうる貢献を問い続け、自己実現の可能性を大きくしていくことは、

自らを成長させていくうえでの大きな促進剤だといえるでしょう。

 

 

A lesson from P.F.Drucker

 

∵ 本当の人間関係とは

 

対人関係の能力をもつことによってよい人間関係がもてるわけではない。

自らの仕事や他との関係において、貢献に焦点を合わせることによって

よい人間関係がもてる。

『経営者の条件』—p.91


 

組織は、「成果があがる」ことを前提としています。

成果とは、その組織が何のために存在しているのかを示すものです。

成果のあがらない組織は、社会に必要とされない存在です。

組織の成果は、一人ひとりの貢献がつながることで結実します。

つまり、組織が存続するかどうかは、成果に結びつく人間関係があるか

どうかにかかっています。ですから、単に「いい人」の集まりでは意味が

ありません。対人関係の能力に長けた人を集めただけでも足りません。

組織に貢献できている人たちがうまくつながって、成果をあげられるか

どうかが重要なのです。

もちろん、対人能力は必要です。しかし、こと組織においては、その能力が

あるからといって、よい人間関係を築くことができるとは限りません。

メンバーの仲がよくても、職場が和気あいあいとしていても、成果に焦点が

合っていない組織は衰退の道をたどります。多くの組織で繰り返される

悲劇は、この人間関係の理解への誤解からきています。

一人ひとりが貢献に寄与しているか。そうした個人が連携して成果をあげて

いるか。私たちはいま一度、このことを確認しなければなりません。

 

コラム 人間関係が及ぼす影響

 

組織は成果をあげるために存在しています。人間関係とは、そのために

一人ひとりの貢献をつなぐものです。成果に焦点を絞った人間関係だけが

結果を残せるのです。

 

—-馴れ合いが士気を下げる

 

二○○一年まで四年連続最下位だった阪神タイガースは、まさに誤った

人間関係を築いた例といえるでしょう。

テコ入れのために就任した星野仙一監督は、著書『迷ったときは、前に

出ろ!』の中で、当時のチームの様子を手厳しく指摘しています。

敗戦翌日のチーム内は、「あのコースを打たれちゃ、しょうがない」

「(相手投手の)あのフォークのキレじゃあな。追加点は無理だよ」という

慰め合いの言葉ばかり。試合中に誰かが失敗してベンチに帰ってきても、

たとえそれが怠慢プレーであっても「ドンマイ」と声をかける。

自分の失敗に保険をかけるためにお互いが馴れ合っていて、よいプレーを

して勝とうという意識が著しく欠けていたそうです。

このような停滞した雰囲気を一掃し、各々の意識を目覚めさせ、士気を

向上させたことで、阪神タイガースは二○○三年に一八年ぶりの優勝を成し

遂げることができました。

 

—-成果に向かう人間関係

 

駒澤大学附属苫小牧高校野球部が、二○○四年、二○○五年と夏の甲子園

大会連続優勝を成し遂げた背景を見てみましょう。

同校は、一九九○年代から全国制覇を目標に掲げていた香田誉士史監督の

もと、雪上ノックや竹バットでの打撃練習などのユニークな練習方法が

注目を集めました。チームのアドバイザーだった遠藤友彦氏によると、

当時のチームづくりは、厳しい中にも家族的な明るさが宿っていたと

いいます。

なんと、体育会系では珍しく、先輩も下級生も、お互いが呼び捨てだった

のだそうです。そして練習中は、上下関係なく、失敗に対して容赦ない

ヤジが飛んだとのことです。

自らの結果とまっすぐ向き合い、技を高める。お互いの切磋琢磨し合う

ための助言や叱咤を惜しまない。目標に対してオープンな人間関係の中で

練習を積んだことが、連覇という大きな成果につながったといえるでしょう。

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る