実践するドラッカー[行動編] ㉒
A lesson from P.F.Drucker
∵測定基準を決める
目標設定の難しさは、いかなる目標かを決定することにあるのではない。
いかに目標を設定すべきかを決定することにある。
この決定を実りあるものにする方法は一つしかない。(中略)
測定すべきものを決定し、その測定尺度とすべきものを決定することで
ある。(中略)
目標が目に見える具体的なものになる。
『現代の経営<上>』—-p.86
今年のあなたの目標は、と聞かれたとき、何と答えますか。
例えば、「本をたくさん読む」では、目標設定の仕方としては、不十分
です。
目標は、一定期間が経過した時点で、○×がはっきりつくものでなければ
なりません。「毎月本を五冊読む」といった具合です。
目標が測定可能であることは、不可欠の条件なのです。
一年を終えて達成できたかどうかを知ることができれば、その一年が無駄に
なってしまいます。しかし残念ながら、個人はおろか、企業から国家に
いたるまで、目標は曖昧に立てられているのが現実です。
もう一つ大切なのは、インプット系の目標とアウトプット系の行動目標で、
「ウエストを三センチ絞る」はアウトプット系の結果目標です。
目標は鮮明化させればさせるほど達成の可能性が上がります。
「ウエストを三センチ絞る」を「一インチ下のジーンズをはく」とすれば、
イメージがはっきりして、やる気はさらに出るでしょう。
測定基準の設定次第で、実現の可能性が高まるのです。
コラム 一位か二位か、差もなくば撤退
GEの歴代のCEOは、ドラッカー教授にコンサルティングを依頼して
いました。
ジャック・ウェルチ元CEOもそうです。あの有名な「世界で一位か二位、
さもなくば撤退」は、ドラッカー教授のアドバイスから生み出されました。
教授はウェルチに対し、「もしまだ手がけていなかったとして、今日その
事業を始めるか」「もしノーであるならば、どうするか」を考えるように
促しました。そしてこう問いかけたそうです。
・GEが心底本気で取り組めないものは、どこか他の企業に任せられないか
要するに、GEとして卓越性のないもの、本気に慣れないものは、実力と
やる気のあるところとパートナーシップを組むべきということでした。
コスト削減のためのアウトソーシングとはまったく別物で、あくまで顧客
から見てベストは何かということです。
そうしてウェルチは「世界で一位か二位、さもなくば撤退」という考えに
たどり着き、これを目標管理の中核に埋め込むことで、事業に携わる
人々の目標を上げ、やる気を鼓舞したのです。
こうして一九八一年から二○○一年までのCEO在任中、GEは長きにわたって
高い成長を続けました。
これらの問いは、企業の戦略だけでなく、個人にも応用ができます。
本気で取り組んでもさほど成果のあがらないものだとしたら、他の人の
力を借りるか、別の目標を立てることを考えてください。
自分の知識や強みを発揮できるほうが、実現の可能性がぐんと上がることは
明らかです。結果として貢献も大きくなり、自己実現の充実感も高まる
はずです。
この続きは、次回に。