Coffee Blake-令和3年11月6日(土)「教育岩盤」
日経新聞 2021年(令和3年) 11月4日に、「日本電産会長 永守重信氏」の
記事が掲載されておりました。
尊敬する経営者の方の〝お話〟は、大変、分かりやすく、明快であるため、
私みたいな者でも大変、勉強になります。
それでは、ご紹介致します。
2021.11.6
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美
教育岩盤
ブランド主義 改革の壁
日本電産会長 永守 重信氏
即戦力の人材育たず
改革がなかなか進まない日本の学校教育。
岩盤のように変化を忌避する構造に風穴を開けるには何が必要か。
キーパーソンや有識者にインタービューした。
Q 経営に乗り出した京都先端科学大(KUAS)の工学部新設では
文部科学省の認可が遅れました。
「会社をゼロから作り、世界ナンバーワンの総合モーターメーカーになった。
産業界は公平公正な競争原理が働き、企業はどんどん改革を進められるが、
大学は文部科学省が許認可権を握っている。
審査の過程では重箱の隅を突くような質問をされて苦労した」
「だが文部省でもKUSAの理解者が出てきて、2022年度にはビジネス
スクールも開設する。文科行政は変わってきたし、もっと変わると期待
している」
Q 大学改革で最大の障壁はなんですか。
「根強いブランド主義だ。競争原理が働かない。友人の孫がKUASに
入りたいと言ったら、親や祖父母がブランド校ではないと猛反対した。
本人も何をしたいのか定まっていない」
「新卒者を1万人採用してきたが、ブランド大と非ブランド大で能力に
何の関係もない。それなのに親はブランド大を目指して子どもを小学校
から塾へ行かせ、夜遅くまで勉強させる。大学に入る時はエネルギーを
使い果たしている。これでは創造力もコミュニケーション能力も育たず、
グローバルで通用しない」
「採用する企業側もブランド主義だ。その方が安心だからだ。
社会が求める学生を送り出す方向に、家庭も学生も企業も考えを変える
べきだ」
Q 工学部はモーターも学べるのが特徴です。
「日本の工学部は幅広い知識を教えるが、モーター専門の学生は少ない。
最初から専門分野を深掘りしないと、即戦力にはならず、世界に勝てない。
米国ではモーターを学びたいならモーターで良い教育をする大学を選ぶ。
ところが日本はブランドで選ぶ。名門大学なら学部は問わない。
だから就職で10社から内定を取ったが、全部違う分野という学生が出て
くる。専門性がないので、すぐに会社を辞めてしまう」
Q KUASに多額の私財を投じました。
「日本では大学に寄付をする人が少ない。税制に問題があるからだ。
米国では資産家がどんどん寄付をする。ハーバードなど財政が豊かな
大学には多額の寄付が集まる。それで留学生を集め教員の研究費も出す。
ところが日本では寄付をすると課税されかねない。
これでは寄付はできない」
「国の補助金額頼みでは硬直化した教育しかできない。財政が厳しいからと
補助金を削れば、研究費がなくなり世界と戦えない。もっと資産家が寄付を
しやすくすべきだ。明治初期は金持ちが市立大学をつくった」
Q 医学部創設の構想も表明しました。
「調べるとあまりにもバリアーが高い。政治も絡むし医師会も絡み、
利害関係が複雑だ。医者が増えることを好まない人もいる。
何かをするときに過去の壁を崩すことは並大抵ではない。
医学部をつくりたいがこの壁を破る力が自分にあるのか。
大概の事は諦めないが、これは簡単ではない。私が50歳なら可能性も
あるだろうが、時間がない」
「これからの永守学園では人間教育をやりたい。日本人としての誇りを
持ち、世界に通用し、将来の日本をつくる若者を育てることだ。
例えばDX(デジタルトランスフォーメーション)人材やソフトウエア技術者、
人工知能(AI)の専門家など世の中が求めている人材だ。
社会が不足している、こうした人材を育てたい」
(聞き手は編集委員 横山晋一郎)
● 忌避(きひ)
きらって避けること。「徴兵を―する」
● 風穴を開ける
転じて、閉塞感のある組織や事態などに新風を吹き込む。
「寡占市場に―・ける」
●キーパーソン(key person)
かぎを握る人物。重要人物。キーマン。
● 有識者
学問があり、見識が高い人。
● 公平公正
「公平」とは、「すべてのものを同じように扱うこと」という意味の
言葉です。判断や処理などがある方向に偏ったりしないことや、そう
したさまを指します。読み方は、「こうへい」です。
「公正」の辞書での意味は、「平等で偏りがないこと」「公平で正しい
こと、またそのさま」というものです。つまり、基本的には「平等」や
「公正」と同じ意味ということになります。読み方は、「こうせい」です。
● 重箱の隅を突く
『重箱の隅(すみ)をつつく』という言葉があります。
これは“重箱の四隅に残ったモノを、楊枝でつついて食べる”という意味
です。 そこから『どうでもイイような、細かいことばかり取り上げて、
クチうるさく言う』とか『とても細かいことまで問題にする』、そんな
使われ方をしています。2017/01/06
● 寄付
<税制優遇>個人で寄付した場合
個人が寄付をした場合、所得税・住民税・相続税が優遇されます。
所得税は、1年間に支出した寄付金から2,000円を差し引いた金額の
40%が控除されます。住民税の場合は、1年間に支出した寄付金から
2,000円を差し引いた金額の10%が控除されます。
いかがでしたか。
これを読んでいただき、どのような感想を持ちましたでしょうか。
今後のご活躍に、注目したいと思います。
2021.11.6
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美