「人を動かす人」になれ! ㊲
41.夜遅くまで残業をする人よりも、朝三○分早く出社する人を重視する
いまから二○年ほど前の話だ。
偶然わたしは、ある高明な経営コンサルタントに巡り合うことができた
ので、その先生に経営指導を打診してみた。すると、「引き受けるか、
引き受けないかは、あるチェックをさせてほしい」と回答があり、しば
らくして「何月何日の朝七時に伺う」と言う連絡があった。
そんなに早い時間から何をチェックされるのか、不思議に思っていると、
約束の時間からずっと工場の門の前に立ち、社員がどういう順番に、
いったい何時ごろに出社してくるのかを観察されていた。
理由を尋ねてみると、「社員の出勤時間の遅い会社はいくら熱心に指導を
してもよくならない。不良品や在庫を抱えていても、それすら改善する
ことができない」とのことだった。
わたしはさっそくデータをとってみた。そうすると、出勤時間の遅い社員は
総じて仕事の成績がよくない。出勤時間ギリギリに寝ぼけ顔で飛び込んで
くる社員、遅刻しているのに平然と会社の門をくぐるような社員はまず
ロクな仕事をしていないことがわかった。
物事の成否は、案外ささいな心がけで決まるものである。
そんな心がけの一つが「休まず、遅れず」ということだ。
たとえば、何らかの事情があって遅れる。あるいは休む。
そうなると仕事を与えようとしていた上司の信頼を失い、チャンスを逃す
ことになる。客先からの注文であれば他社に回ってしまうかも知れない。
わたしは日ごろから、「夜二時間遅くまで残業をしている人よりも、朝
三十分早く出社する人を重視する」「よく休む人は信頼も期待もできない」と
社員によく話すが、これは小さな心がけが思わぬ成果に結びついたり、
逆に致命傷にもなりかねないことを身をもって体験してきたからだ。
心がけという表現をしたが、正しくは「心の余裕、ゆとり」といった方が
いいのかも知れない。何事においてもパーフェクトにできる人間はいない。
だが、わずかでも心に余裕があれば行動を起こす前に、確認もれはないか、
手抜かりはないかを確かめてみることができる。
ところが、こうしたゆとりがなくていつもギリギリの状態で物事を進めて
いると、小さなミスもどんどん膨らんでいく。
仕事に取り組んでいくうえで、この差は非常に大きい。
後手に回ってしまわないように、常に先手を打つ。
人を動かしていくときにもこの鉄則が当てはまると思う。
● 高明
地位が高く勢力があること。 富貴なこと。 また、そのさま。
● 成否
事が成ることと成らないこと。成功するか失敗するか。
「結果の―は問わない」
● 心がけ
1. ふだんの心の持ち方。「―がよくない」「ふだんの―しだいである」
2. たしなみ。心得。
● 致命傷
取りかえしのつかないほど大きな痛手。
「収賄の疑惑が―となって落選する」
● 鉄則
変えることのできない規則や法則。「民主主義の―」
この続きは、次回に。