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「人を動かす人」になれ! ㊿+8

7章 理屈で人は動かない! だから—–

 

61.手塩にかけなければ人は育たない。

 

最近はあまり使われなくなったが、〝手塩にかける〟という言葉がある。

厳しさのなかにも愛情があふれ、未熟で不慣れな後輩をそれぞれの個性や

タイプに応じて、手間暇をかけてじっくりと一人前に育て上げていくと

いうイメージがあって、わたしの好きな言葉の一つである。

その手塩にかけるイメージとして真っ先に思い浮かぶのが、幼いわが子に

自転車の乗り方を教えてやるときのことだ。

子供は親や近所の友だちが自転車に乗っているのを見て自転車に興味を

持つ。会社では、部下が仕事に興味を持つまで待っていられないので、

上司がここまでは手本を示す。あるいは実際にやってみせるなど、できる

だけ興味を持たせる方向で引っ張っていくことになる。

次にわが子に実際にハンドルを握らせ、子供に不安を与えないように親は

自転車が倒れないように支えてやる。そして最初はゆっくりとペダルを

踏ませる。これを気長に何回も繰り返す。

ここで焦って早く手を離しすぎたり、スピードを上げさせようとすると、

自転車が倒れたり、とんでもない方向に進んで大ケガをする原因にもなる。

ここで大きなケガをすると子供は一生自転車に乗れなくなるかも知れない

ので、最新の注意が必要となる。以上が会社では新入社員の導入教育の

期間にあたると考えればよい。

次のステップでは、支えるだけではなく後ろから押してスピードをつけ、

子供には告げずにそうっと手を離す。しかし、倒れそうになればすぐに

手を添えてやる。これも何度か繰り返し、徐々に支える回数を減らして

いく。このあたりから「手を離すよ。でも倒れそうになったら、支えて

あげる」といった言葉をかけ、同時に「手を離しても三メートル走れた」

「今度は五メートルまで行けた」といったように、子供の努力の成果を

具体的な形にして評価してやる。ここまでくれば、手を離すのは時間の

問題だ。親がこれだけのことをすれば、子供は親の顔を見るたびに「今日、

自転車で—–」といった話を聞かせてくれるに違いない。

これが手塩にかけるということだ。上司と部下の関係は本来こうでなければ

ならないと思う。一般論として多くの管理者に見受けられるのが、支える

手を離すのが早すぎる、後押しの部分が少ない、努力の成果をきちんと

評価していないという点だ。これらが不充分なことを棚にあげて、「部下の

能力や努力が足りない」とか「部下が育っていない」とグチをこぼすのは

筋違いだし、部下を思うがままに動かせるはずもない。

 

● 手塩にかける

 

手塩にかける」とは、自ら世話をして大切に育てることを意味する慣用句。

日常会話やビジネスシーンでも「手塩にかけた甲斐があった」「手塩

かけようと思っている」などの使われ方をする。2021/07/03

 

● 手間暇かける

 

時間をかけ、労力・技能も十分に費やし、丹念に制作・作成する、と

いう様子を表現する言い回し。「手間」は労力、「ひま」は時間を指すと

捉えられる。「手間ひま」の語は、国語辞書などでは「手間隙」の字で

表記される場合が多い。もっとも「隙」も「」もほぼ同義であり、

手間暇」の表記が併記されてある場合も少なくない。

 

 

この続きは、次回に。

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