お問い合せ

「人を動かす人」になれ! ㊿+9

62.「大変な時代だが、これだけのことをやれば大丈夫」という一言。

 

人間社会はきれいごとだけでは通用しない。現に企業は熾烈な生存競争を

行なっている。生存競争であるかぎり、勝つか負けるか、生きるか死ぬか。

極論をいえば、このどちらしかない。というよりも、人間が生まれた瞬間

から死への道を歩み初めているのと同じで、会社も創業したときから倒産に

向かって走り出すようなものだと、わたしは考えている。

「銀行は大丈夫」「上場企業だから安心」といった一昔前の常識も、もはや

通用しなくなった。まさに、「盛者必衰のことわりをあらわす、おごる者は

久しからず」という平家物語の書き出しそのままを、いまの時代が映し

出している。企業のトップ、リーダーは常にこうした危機感を持ち、部下

とも共有しなくてはいけない。

わたしはわが社の入社間もない社員に対して、機会があるごとに「会社が

どんどん大きくなるのと、倒産するのとどちらがいい」と問いかけてみる。

当然のことながら、答えは一○○パーセント「大きくなった方がいい」だ。

さらに「仕事はキツイか」とも聞いてみる。これまた一様に「思っていた

以上にキツイ」である。すかさず、「キツイから会社が大きくなる。

反対にぬるま湯に浸かっていては大きくなるどころか、すぐに会社は倒産

してしまう」というように、わかりやすく危機感を訴える。

文字通り〝鉄は熱いうちに打て〟で、こうした危機感の醸成は新入社員の

時代からはじめる必要がある。たしかに、最近の若者は口では立派なことを

いう。だが、頭デッカチになりすぎて、認識の甘さが目立ち、危機感どころか

自分自身の発言に大きな矛盾のあることさえ気づいていないことも多い。

つまり、彼らの言い分を突き詰めていくと、給料はたくさん欲しいが

キツイ仕事はやりたくない。早く昇進はしたいが責任が重くなるのはイヤだ。

会社や職場のヒーローにはなりたいが地道な努力はしたくない、といった

具合になる。

こうした人たちに対して、危機感を植えつけることなく指示や命令を出して

みても空振りに終わる。ただ、危機感と悲壮感とを混同してはならない。

単に「景気が悪くて大変だ」などと騒ぎ立てるだけで悲壮感は生まれても、

危機感は育たない。

「大変な時代になったが、これだけのことをやれば大丈夫だ」という明確な

指針をトップ、リーダーが示してはじめて、危機感をバネにすることが

できる。夢やロマン、目標を指針のない悲壮感では、人を動かすことは

不可能だ。

 

● 熾烈

 

《「熾」は火勢の盛んである意》勢いが盛んで激しいこと。

また、そのさま。「―をきわめる商戦」「―な戦い」

 

● 盛者必衰

 

盛者必衰とは、この世は無常であるから、栄華を極めているも必ず

衰えるときがくるということ。

 

● 栄華

 

権力や財力によって世に時めき、栄えること。また、ぜいたくをすること。

「―を極める」「栄耀―」

 

● 栄耀栄華(えいようえいが)

 

富や権勢があってぜいたくを尽くすこと。 また、人や家などが華やかに

栄えること。 また、おごりたかぶること。

▽「栄耀」は栄え輝く、栄えてぜいたくな暮らしをすること。

 

● 鉄は熱いうちに打て

 

鉄は熱いうちに鍛えるように、物事は機会と見たらただちに打て

という意。

 

● 醸成

 

ある状態・気運などを徐々につくり出すこと。

「不穏な空気が―されつつある」

 

● 危機感

 

今のままでは危ないという不安や緊迫感。「―をいだく」

 

● 悲壮感

 

辛く悲しい中でも健気に立ち振る舞う、という様子を意味する表現。

 

● 健気

 

1. 殊勝なさま。心がけがよく、しっかりしているさま。

    特に、年少者や力の弱い者が困難なことに立ち向かっていくさま。

  「一家を支えた―な少年」「―に振る舞う」

2. 勇ましく気丈なさま。

     武士の女房たる者は、―なる心を一つ持ちてこそ」〈太平記・一〇〉

3. 健康であるさま。「ああ、―な老者かな」〈蒙求抄・一〉

 

● 指針

 

 物事を進めるうえでたよりとなるもの。参考となる基本的な方針。

手引き。「人生の―とする」

 

 

この続きは、次回に。

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