お問い合せ

「人を動かす人」になれ! ㊿+13

66.本当の会社の仕組みを教えるから、職業観が生まれる。

 

わが社も例外ではないが、どこの会社にも「給料が安い」と不満をいう

社員がいる。だが、自分の手取りの給料の五倍以上の利益(売上ではない)

を上げている社員以外、こんなことを言う資格はないのである。

たとえば、二、三人の友人と一緒でもよいが、個人で何か事業をはじめた

としよう。権利金を払って事務所を借り、机やイスを購入して、電話を

引く。そして、仕事に必要な機器や道具を揃える。

これだけでも少しまとまった資金がいるが、これ以外にも毎月の家賃や

光熱費、電話代、そのほか諸々の費用がかかる。

これだけ準備をすればすぐに利益があがるのかといえば、現実にはそうは

ならない。自分でモノをつくろうが、どこかで商品を仕入れてこようが、

信用や実績ができる、なかなか相手にしてもらえるものではない。

ところが、仮に日本電産に入社したなら、これらのものがその日のうちに

すべて与えられる。信用や実績といった目に見えないものを除いたとしても、

わたしはこれだけで給料の三倍を軽く超える価値があると思う。

それだけではない。会社は給料の約二倍の人件費を負担している。

具体的には、健康保険や厚生年金などの法定福利費、所得税、退職金の

ほか、毎月の交通費、いろんな補助も行っている。

つまり、賞与は別にしても、給料の五倍ぐらい働いても、収支はトントン

だということだ。だから、給料の五倍以上の利益をあげている社員なら

「給料が安い」という資格はあるが、それ以下であれば給料泥棒だ。

ただし、新入社員は給料泥棒でも仕方がない。後輩ができるまでの一年間は

修業の身と心得て、周囲の人がきっちり働いているのに自分だけが—–

などと思う必要はない。だが、ぜいたくなグチをいったり、「辞める」

とはいい出さないこと。一年も経てば仕事の要領も覚えられるし、仲間

もできる。会社の仕組み、機構といったものもわかってくる。

仕事がおもしろくなるのはこれらがわかってからの話だ。

一年間は給料泥棒。どうせ盗むのであれば、給料だけではなく上司や先輩の

立派な仕事ぶり、知識やノウハウもどんどん盗めばよいし、恥をかくのも

いい—。

わたしは、このようなほかの会社なら覆い隠しておくようなことも、

ストレートに社員にぶつけていく。特に最近の若い人は職業観がどんどん

希薄になりつつある。たくさんの給料が欲しいのなら、それに見合った

働きをする。ここから教育をはじめないと、いまの若い人は動かせないのだ。

 

● 機構

 

会社・団体などの、組織。また、その組織の仕組み。「官僚―」「―改革」

 

● 職業観

 

職業観・勤労」は,職業や勤労についての知識・理解及びそれらが

人生で果たす意義や役割についての個々人の認識であり,職業・勤労に

対する見方・考え方,態度等を内容とする価値である。

子どもたちが働く意義や目的を探究し,一人一人が自分なりの職業観

勤労を形成・確立していく過程を指導・援助することが大切である。

 

● 希薄

 

ある要素の乏しいこと。物事に向かう気持ち・意欲などの弱いこと。

また、そのさま。「問題意識が―だ」

 

 

この続きは、次回に。

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