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「人を動かす人」になれ! ㊿+30

85.社員に三つのタイプ

   —–「人を動かせる」のは第一のタイプだけである

 

わたしは、社員には大きく次の三つのタイプがあると考えている。

第一は自ら仕事に燃えられる自燃力のあるタイプ。

第二は他人が仕事に燃えるのを見て、刺激を受けて自分も燃えるタイプ。

第三がまったく燃えない、あるいは燃えようとはしないタイプだ。

これからの厳しい経済環境下で企業が生き残っていくためには、当然の

ことだが年齢やキャリアに関係なく第一のタイプ、すなわち自燃力のある

人物をリーダーにすべきである。しかし、生まれ持って自燃力を備えて

いるような人材はごくわずかで、大多数の人間は楽を求めるのが普通だ。

仕事というのは、本来決して楽しいものではない。

「もし、仕事が本当に楽しいものなら遊園地や映画館などと同様に、

わたしは毎朝会社の玄関に立って社員一人一人から入場料を徴収する」と

社員にもいうことがあるが、給料やボーナスを払うこと自体、働いたり

仕事をすることが、いかに大変で、苦しいことであるかの証明でもあろう。

だが、苦労や困難から逃げようとすると苦労や困難は追いかけてくるし、

楽を追いかけようとすると楽は逃げていく。これはわたし自身が過去の

経験から割り出したテーゼである。

この理屈が理解できる社員は、おのずと自燃力を持つようになる。

たとえば、わが社の営業マンの一人は小さな会社ばかりを相手にして

いたが、それでも結構な実績をあげていた。ところがあるとき、彼個人

としては致命的な、当時のわが社にとっても相当な痛手をこうむる不渡りを

食らった。わたしは彼を震え上がらせるほど怒鳴りつけた後で、苦労や

困難から逃げようとするから、結果的に苦労を背追い込んだのだという

話をした。翌日、スッキリとした顔で「もう一度だけチャンスをください。

このままでは辞めるに辞められません」といってきた彼は、その日から

小さな会社にアプローチするのをやめて、上場企業以外に足を運ばなく

なった。最初は相当苦労したようだが、一度きっかけをつかむと、とん

とん拍子にうまく行くようになった。

人間の大多数は第二のタイプ。

他人に刺激されて燃えるか、刺激の受け方によっては燃える可能性を

秘めている。こうした第二のタイプの着火剤になれる、すなわち人を

動かせるのは、自燃力を持った第一のタイプ以外にない。

年齢やキャリアが浅いといった理由から、彼らのリーダーへの道を閉ざ

しているような企業に明日はない。

第一のタイプを中心に、燃える組織をつくり上げることができれば、

あえてリストラなどやらなくても、第三のタイプは自然に排除される

はずである。去る者は追わず、別れるのも何かの縁だと思っている。

 

● 自燃力

 

自燃力(じねんりょく)とは、字の如く、自らを燃やすチカラのことです。

 

● テーゼ

 

「テーゼ」の意味は、”証明されるべき命題・これから証明を試みてゆく

命題”です。哲学の文脈で「テーゼ」の言葉が使われるときは、この意味で

とらえるとわかりやすいです。

テーゼは「命題」とも訳されます。命題とは、真または偽という性質を

もつ一つの判断のことをいいます。数学においては定理や問題のことを

指します。

テーゼには命題という意味が含まれますが、命題にはテーゼと異なる

意味も含まれるため、注意が必要です。命題には「題名」の意味や、

「問題提起」のような意味での誤用もあります。

 

● 去る者は追わず

 

《「孟子」尽心下の「それ予の科を設くるや、往 (さ) る者は追わず、

来たる者は拒まず」から》自分から離れて行こうとする者は、その

意志に任せて、強いて引き留めない。

 

 

この続きは、次回に。

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