お問い合せ

「人を動かす人」になれ! ㊿+32

87.エリート集団の落とし穴—先に楽をとるか、後で楽をするか

 

わが社では、世間でいわれるエリート学生を不採用にしても、いわゆる

落ちこぼれや留年した学生を毎年何名か採用している。

もちろん、単に勉強がイヤで、遊び惚けていたために落ちこぼれた、

あるいは怠けていて単位がとれずに留年したという学生は論外。

そうではなく、勉強以外の何かに打ち込んだために成績がよくなかった、

あるいは留年したという学生を採用する。

はっきりいって学問というのは退屈なものだ。だからこそ、学問に打ち

込んだ人物は尊いといった見方もある。

しかし、これだけ情報のあふれている現代社会に生きている若者が、

学問以外に目を奪われて、そこに情熱を注ぎ込むことがあってもおかしく

ない。スポーツでも、アルバイトでも、クラブ活動でもいい。

あるいは、一人でリュックを背負ってヒッチハイクをしながら海外を歩き

回ったとか、ボランティア活動にのめり込んだというのでもいい。

とにかく自分の判断でこれをやりたいという目標を決め、それを行動に

移したのであれば、漫然と学校に通ってそこそこの成績で卒業した学生

よりも、よほど魅力があるし、磨けば光り輝く可能性があると考える

からだ。

もう一つ理由がある。それは日本の官僚を見てもわかるように、エリート

ばかりが集まる組織はいったん既成事実ができると、時代が変化しても

それを変革しようとする意欲が乏しく、会社であれば大企業病が蔓延して

くる。なぜなら、エリート集団というのは、ほとんど失敗を経験したこと

のない連中ばかりが集まっているため、何かことが起こったときに自分が

矢面に立とうとせず、保身に回ってしまう傾向が強くなるからだ。

むしろ落ちこぼれは何度も失敗を経験しているので、逆に打たれ強いし、

開き直るすべも知っている。特に、急成長を遂げている企業は、エリート

ばかりを集めるのではなく、そのなかに落ちこぼれを入れてバランスを

とるという発想が欠かせない。たしかに、エリートばかりを集めると

トップや幹部はしばらくの間は楽ができるかも知れない。

だが、いずれ近い将来にこの楽をしたツケが確実に回ってくる。

人を育てて動かすのが、経営トップ、管理者の最大の仕事である以上、

ここで手抜きをやろうとするようでは、その企業に未来はないと思う。

先に楽をとるか、それとも後で楽をするのをとるか、わたしはいま、

いくら苦しんだとしても、楽を将来に残しておく方をとる。

ゆえに、わが社ではあえて落ちこぼれや留年組を採用し、中途採用で

迎えたエリートの管理者に人を動かす本当のむずかしさを身をもって

体験させているのである。

 

● 漫然

 

とりとめのないさま。ぼんやりとして心にとめないさま。

「―と日を暮らす」「―と眺める」

 

● 既成事実

 

すでに起こってしまっていて、承認すべき事柄。

 

● 変革

 

変えて新しいものにすること。また、変わって新しいものになること。

改革。「認識の―を迫る」「制度を―する」

 

● 蔓延

 

つる草がのび広がること。病気や悪習などがいっぱいに広がること。

「ペストが―する」

 

● 矢面に立つ

 

① 敵の矢の飛んで来る正面に立ちはだかる。

② 質問・非難・攻撃などの集中する立場に身をおく。

 

● 保身

 

自分の地位・名誉・安全などを守ること。「―をはかる」「―の術」

 

 

この続きは、次回に。

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