P.F.ドラッカー 「仕事の哲学」㉞
□ できることが仕事だけならば
できることが仕事だけならば、問題が生じる。知識労働者たる者は、
若いうちに非競争的な生活とコミュニティをつくりあげておかなければ
ならない。コミュニティでのボランティア活動、地元のオーケストラへの
参加、小さな町の公職など、仕事以外の関心事を育てておく必要がある。
—-『ネクスト・ソサエティ』
● コミュニティー(community)
居住地域を同じくし、利害をともにする共同社会。
町村・都市・地方など、生産・自治・風俗・習慣などで深い結びつきを
もつ共同体。地域社会。
□ ひとかどの存在となる意味
知識社会では、成功が当然とされる。だが、全員が成功することはあり
えない。失敗しないことがせいぜいである。成功する人がいれば、失敗
する人がいる。そこで、一人ひとりの人間およびその家族にとっては、
何かに貢献し、意味あることを行ない、ひとかどとなることが決定的に
重要な意味をもつ。
—–『明日を支配するもの』
□ 成功の機会をもち続ける
第二の人生、パラレル・キャリア、社会的起業家としての仕事、そして
仕事以外の関心事をもつということは、社会においてリーダー的な役割を
果たし、敬意を払われ、成功の機会をもてるということである。
——『明日を支配するもの』
● パラレル・キャリア
パラレルキャリアとは、P・Fドラッカーが『明日を支配するもの』
(ダイヤモンド社)で紹介した考えで、「本業を持ちながら、第二の
キャリアを築くこと」と定義されています。
副業が金銭的な報酬を得ることを目的としているのに対し、パラレル
キャリアでは自分のスキルアップや夢の実現、社会貢献活動などの
ために活動します。
趣味から活動の幅を広げていったり、起業をする準備として始めたり、
また中間団体(NPOや社会人学校など)やボランティアサイトを通じて
活動をおこなったりと、多様な始め方があります。中には、「当初は
無報酬でおこなっていた活動が、徐々に報酬を得ることができるように
なる」というようなこともあります。
● 敬意を払う
相手に対する尊敬の気持ちなどを、話し方や行動などで表現すること。
□ 第二の人生に備えるたった一つの条件
第二の人生をもつには、一つだけ条件がある。本格的に踏み切るかなり
前から助走しなければならない。
—-『明日を支配するもの』
〜〜編訳者あとがき〜〜
ドラッカー教授から名言集の編集を任されて一年が経った。
集めた明言は七○○○を超えた。その七○○○の名言から、「社会的な存在
としての一人ひとりの人間とその仕事」をテーマに約二○○を選んだ者が
本書である。
ほとんどの人がドラッカーの書いたものに線を引く。人によっては手帳に
写す。そして、何年どころか何十年にわたってそこを読む。
ドラッカーの魅力は、教えてくれることだけにあるのではない。
確認してくれるところにある。考えさせ、行動させてくれるところにある。
本書収録分の出典は別掲のとおりである。文章は簡明を期して訳し直した。
ドラッカー名言集の取りまとめは、かねてより大勢の方々から慫慂されて
いたものである。同時刊行の『経営の哲学』および続刊予刊の『変革の
哲学』『歴史の哲学』とともに、それらの方々の期待に沿い、かつて
ドラッカーを友とする方々がさらに増えるならば、これに勝る喜びはない。
このような機会を与えて下さったドラッカー教授、ダイヤモンド社の
御立英史さん、中嶋秀喜さん、小川敦行さんに心より謝意を表したい。
二○○三年夏
上田惇生
● 簡明
簡単ではっきりしていること。また、そのさま。
簡単明瞭 (めいりょう) 。「―な文章」「要点を―に述べる」
● 慫慂(しょうよう)
そうするように誘って、しきりに勧めること。
「今日牧師が来て、突然僕に転居を―した」〈有島・宣言〉
この続きは、次回に。