お問い合せ

ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㉘

成果をあげるには大きな固まりの時間が必要である。

いかに総量が大きくとも細分化していたのでは役に立たない。

このことはエグゼクティブにとって中心的な仕事ともいうべき、人と

働くときにいえる。人というものは時間の消費者であり、多くは時間の

浪費者である。

人のために時間を数分使うことはまったく非生産的である。

何かを伝えるにはまとまった時間が必要である。方向づけや計画や仕事の

仕方について一五分で話せると思っている者は、単にそう思い込んでいる

だけである。肝心なことをわからせ何かを変えたいのであれば一時間は

かかる。何らかの人間関係を築くには、はるかに多くの時間を必要とする。

知識労働者との関係では特に時間が必要である。上司と部下との間に権力や

権威が障壁として存在しないためか、あるいは逆に障壁として存在する

ためか、それとも自意識のためか、理由はともあれ知識労働者は上司や

同僚に多くの時間を要求する。

そのうえ知識労働は肉体労働のようには測定できない。

そのため、正しい仕事をしているか、どのくらいよく行っているかに

ついて、簡単な言葉で伝えることができない。

肉体労働者には、「標準は一時間五○個だが、君は四二個しか生産して

いない」といえる。知識労働者については、満足すべき仕事をしているか

どうかを知ることさえ容易でない。

知識労働者とは、何をなぜ行わなければならないかについて腰を据えて

一緒に考えなければならない。ここでもまた時間が必要となる。

知識労働者には自らの方向づけを自らさせなければならない。

そのため、何が、なぜ期待されているかを理解させなければならない。

自らが生み出すものを利用する人たちの仕事を理解させなければならない。

そのためには多くの情報、対話、指導が必要となる。

ここでも時間が必要となる。しかも上司と同僚にも時間を割かなければ

ならない。

多少なりとも成果と業績をあげるには、組織全体の成果と業績に焦点を

合わせなければならない。

したがって、自らの目を、仕事から成果へ、専門分野から外の世界、

すなわち成果が存在する唯一の場所たる外の世界へ向けるための時間を

必要とする。

 

成果をあげる組織では、トップマネジメントが意識して時間を割き、時には

新入社員に対してまで、あなたの仕事について私は何を知らなければなら

ないか、この組織について何か気になることはないか、われわれが手を

つけていない機会はどこにあるか、気づいていない危険はどこにあるか、

私に聞きたいことは何かとじっくり聞いている。

 

● 障壁

 

妨げるもの。じゃま。「外交の―を取り除く」

 

 

 

この続きは、次回に。

トップへ戻る