ピーター・F・ドラッカー「経営者の条件」㊿+22
人には、「読む人」と「聞く人」がいる。
例外的に、フランクリン・ローズヴェルト、リンドン・ジョンソン、
ウィンストン・チャーチルのように、話をしながら相手の反応をとらえて
情報を得る人がいる。つまり、読むことと聞くことの両方ができる者が
いる。これは法廷弁護士に理想的なタイプである。
読む人に対しては口で話しても時間の無駄である。
彼らは、読んだあとでなければ聞くことができない。
逆に、聞く人に分厚い報告書を渡しても紙の無駄である。
耳で聞かなければ何のことか理解できない。
アイゼンハワーのように一ページの要約が必要な人がいる。
一定の思考過程を必要とし、分厚い報告書がなければ理解できない人が
いる。あるいは、あらゆることについて、六○ページにわたる数字のデータを
見たがる人がいる。意思決定の準備のために初めから関与したがる人が
いる。逆に時期がくるまでは何も聞きたくないという人がいる。
上司の強みを生かすには、問題の提示にしても、「何を」ではなく、
「いかに」について留意しなければならない。
何が重要であり何が正しいかだけでなく、いかなる順序で提示するかが
大切である。政治性が意味をもつ仕事において、上司の強みが政治的な
手腕にあるならば、まさにその政治的な側面から最初に説明する必要が
ある。上司は、何についての問題であるかを容易に理解し、その強みを
存分に発揮する。
誰もが人について専門家になれる。本人よりもよくわかる。
したがって、上司に成果をあげさせることはかなり簡単である。
強みに焦点を合わせれば良い。弱みが関係なくなるように、強みに焦点を
合わせればよい。上司の強みを中心に置くことほど、部下自身が成果を
あげやすくなることはない。
● 思考過程
思考の過程とは成功への道筋が存在しない中で、暫定的、実験的、懐疑的な
さまざまな糸口らしきものを探し、失敗にも多く行き当たりながら思索を
進めるものと論じた。 人間の思考とは、対称モードと非対称モードが
混合する、いわゆる複論理的構造 (bi-logical structure) を持つという。
● 暫定的(ざんていてき)
仮にしばらく定めておくさま。 一時的なさま。
● 懐疑的
ある事柄に対して疑う傾向にあるさま。 また、疑いをもって物事に
接する傾きのあるさま。
この続きは、次回に。