お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-50

第二次世界大戦後のアメリカの鉄鋼業の例が、そのような弱みとその

もたらす影響を教えている。

 

第二次世界大戦の直後、ある大手鉄鋼メーカーが、若手エコノミストの

グループに鉄鋼需要の予測を委託した。当然メーカーは、国民所得や

GNP(国民総生産)との関連において鉄鋼需要の伸びが示されるものと

考えていた。

ところが報告書は、需要の伸びではなく、その基礎となるべき前提を

問題にした。素材としての鉄鋼の機能の多くが、ほかの素材によって

代替されるようになっていた。しかも、鉄鋼の製造工程には、競争力を

失わせるコスト上の制約があった。

一九世紀半ばに開発された製鋼の工程では、三度加熱し三度冷却しなけ

ればならなかった。しかも溶解された高温の金属という扱いにくい重量

物を移動しなければならなかった。

何事によらず、物理的、経済的にコストの最もかかる作業は、加熱と移動で

ある。

すなわち、鉄鋼には、機械的なバッチ工程に伴うあらゆる種類のコストが

組み込まれていた。これに対し、ほかの素材、特にプラスチック、アルミ、

ガラス、コンクリートの生産には、加熱と冷却の繰り返しという無駄が

なく、熱量が保存されるフロー工程という経済性があった。

しかもそれらの新素材は、従来鉄鋼しか使われていなかった建築から梱包に

いたる最終用途の多くにおいて、十分満足すべき性能をもつにいたって

いた。

さらにその報告書は、製鋼の工程に伴う制約に対する取り組みが、ほかの

メーカーではすでに行われていることを指摘していた。

そしてかなり近い将来において、技術のイノベーションがもたらされる

かもしれないとしていた。

 

この鉄鋼メーカーは、予測を委託したとき生産能力の拡張が提案される

ものと期待していた。事実、このメーカーのマネジメントのうち、保守的な

者は無謀な拡張が提案されることを危惧して、需要予測の委託に反対して

いた。しかし報告の内容は期待とはまったく違うものだった。

 

 

この続きは、次回に。

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