お問い合せ

P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-97

社内規定や予算に見られる知識労働についての曖昧かつあまりに

一般的な定義が、その証拠である。「マーケティング全般の助言

および支援」が一つの定型である。

「あらゆるレベルにおける人材活用の改善」も一つの定型である。

しかし、なぜマーケティングは助言と支援を必要とするのか。

そしていかなる助言と支援の成果を期待しているのか。

いつまでに成果を期待しているのか。

特に、最も重要で高価な知識労働、すなわち、技術、市場、顧客、

そのほかの領域における研究活動に関して、事業の目的と目標に

焦点を合わせた仕事の計画が必要である。

 

今日企業においても、純粋研究、すなわち道の新しい知識の獲得の

ための研究が必要になっている。しかし純粋研究といえども経済的な

成果に焦点を合わせなければならない。

純粋研究は目標に対する方向づけを行うことによって生産的となる。

もちろん成果を生むかどうかはわからない。成功の確率も小さい。

しかしもし成果をもたらした場合には、その成果は経済的に使える

ものでなければならない。

ナイロンを生んだデュポンの研究は純粋研究だった。

しかしそれは明確に経済的な成果を目指していた。

デュポンの事業の構想や目標と明確に合致していた。

同じことは、トランジスタを生んだベル研究所の研究や合成ダイヤ

モンドを生んだGEの研究についてもいえた。

一九六三年のノーベル科学賞を受賞したドイツのカール・ツィー

グラーやイタリアのジュリオ・ナッタの高分子科学に関する研究も

完全な純粋研究だった。

これも最初から経済的な成果に焦点を合わせていた。

すなわち、新しい産業を創造することに焦点を合わせていた。

 

知識労働に関しては、大きな成果を生まない仕事は行わないことが

原則でなければならない。とりわけ研究活動においては、生産的で

なくなったものを廃棄し、成果をあげられるものに稀少な人材を集中

することが必要である。なぜならば、知識労働は異なるほどの能力を

もつ人たちによって行われて初めて生産的となるからである。

傑出した人たちというものは、ほかのあらゆる人間活動と同じように

知識労働においても稀少である。

 

この続きは、次回に。

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