P・F・ドラッカー「創造する経営者」㊿-99
資金や労力に比して、大きな利益を約束しながら、企業全体に対する
貢献はあまりにもわずかという提案がある。他方、それ自体は収支が
合うにすぎないが、企業全体の成果として大きく貢献する提案がある。
重要なのは特定の事業の利益ではなく、企業全体の業績に対する影響で
ある。
新しい事業のための提案は、必ずいかなる資源、特にいかなる人材が
必要であり、どこからそれらの資源を持ってくるかを明らかにして
いなければならない。
新しいことを初めても、そのための一級の資源が手に入らなければ
意味はない。新しく大きな仕事に必要な条件を備えた資源、特に優れた
能力をもつ人材が遊んでいることは稀である。
したがって、それらの人材は、現在の仕事を廃棄させるか、あるいは
利益を出すだけの存在にさせることによって手に入れなければならない。
次に必要とされることは、ほぼ三年ごとにあらゆる製品とサービス、
活動、その他事業に関わるあらゆることについて、体系的な見直しを
行うことである。
まず期待と実績を見直さなければならない。次に「もし、この製品、
活動、部門が、今日なかったとしたら、同じことをするか」を問わな
ければならない。答えが「否」であるならば、続いて「それではこれを
継続すべきか。その理由は何か」を問わなければならない。
新しいものに機会を与えるには、もはや成果を約束できない古いものは
進んで切り捨てなければならない。
組織の中の人材を創造的にたらしめることを望むならば、彼らの仕事や
職務を古色蒼然とした仕事の維持ではなく、将来性のある新しい仕事に
結びつけ、定型化したものではなく成果をあげるものに結びつけるよう
事業をマネジメントしていかなければならない。
● 古色蒼然(こしょくそうぜん)
長い年月が過ぎて、ひどく古びているように見えること。
いかにも古めかしいようす。「蒼然」は、この場合は色の古びた
さまをいう。 『五雑俎(ござっそ)―人部三』に、「然東京之筆、
古色蒼然」と記されている。
この続きは、次回に。