「道をひらく」松下幸之助 ⑫
・視野を広く
世の中は広い。その広い世の中を、狭い視野ですすめば行きづまる。
人生は長い。その長い人生を、狭い視野で歩めば息が切れる。
視野の狭い人は、わが身を処する道を誤るだけでなく、人にも迷惑を
かける。だから、おたがいの繁栄のために、おたがいの視野の角度を、
グングン広げなければならない。十度の視野なら十五度に。
十五度の人は二十度に。
もっとも、百八十度までひろげてみても、それでようやく、ものごとの
半面がわかっただけだから、ほんとうは、グルリと三百六十度を見わ
たさなければならない。それが、真の融通無碍、つまり解脱というもの
ではなかろうかだが、なかなかにこうはいかない。百八十度も広がれば
たいしたもので、普通は、せいぜい十五度か二十度ぐらいの視野で、
日々を歩んでいるのではなかろうか。だから争いが起こる。
悩みが起こる。そして繁栄がそこなわれる。
視野を広く。どんなに広げても広すぎることはない。お互いの繁栄と
平和と幸福のために、だれもが、広い視野を持つように心がけたいも
のである。
● 融通無碍
行動や考えが何の障害もなく、自由で伸び伸びしていること。
▽「融通」は滞りなく通ること。 「無礙」は妨げのないこと。
「礙」は「碍」とも書く。
● 解脱
悩みや迷いなど煩悩 (ぼんのう) の束縛から解き放たれて、自由の境地に
到達すること。悟ること。涅槃 (ねはん) 。
「―の境地」「煩悩を―する」
● 煩悩
身心を悩まし苦しめ、煩わせ、けがす精神作用。
貪 (とん) ・瞋 (しん) ・痴 (ち) は根元的な煩悩として三毒という。
染。結。垢 (く) 。「―にさいなまれる」「―を解脱する」
● 涅槃
煩悩 (ぼんのう) の火を消して、智慧 (ちえ) の完成した悟りの境地。
一切の悩みや束縛から脱した、円満・安楽の境地。
仏教で理想とする、仏の悟りを得た境地。
この続きは、次回に。