Think clearly シンク・クリアリー ㉝-1
33. 嫉妬を上手にコントロールしよう—自分を他人と比較しない
□ 古代ギリシア人も、猿も、「嫉妬」していた!
「友人が少しずつ成功するたびに、私は少しずつ死んでいく」
毒舌で知られたアメリカ人の小説家、ゴア・ヴィダルは、あるインタビューでそう語った。
ヴィダルは、人間なら誰もがときどき襲われるが誰もが認めたがらない、あらゆる感情
の中でももっとも無意味で役に立たない有害な感情の話をしている。
その感情とは「嫉妬」である。
だが、嫉妬の無意味さが認められるようになったのはここ最近のことではない。
嫉妬については、すでに古代ギリシアの哲学者たちも警告を発している。
聖書にも、カインとアベルの寓話をはじめとして、嫉妬の破壊的な力を表す物語がたく
さんある。そして白雪姫。この謎めいた童話は、嫉妬そのものがテーマだ。
イギリスの哲学者、バートランド・ラッセルも、「嫉妬は、不幸を招くもっとも大きな
要因のひとつだ」と述べている。
嫉妬は、身体的な障害や経済的な破壊より、もっと人生の満足度を低下させる。
だからこそ、嫉妬をコントロールする能力は人生には不可欠であり、そのコツを身につ
けられればよい人生を手に入れるための基本的な条件を満たしたことにある。
だが、嫉妬の感情は進化のプログラムに組み込まれてしまっているため、それを抑え込
むのは簡単ではない。
嫉妬は、人間だけの感情ではない。動物も嫉妬する。
(中略)
□ 「自分と同レベルの相手」に嫉妬する
嫉妬に関して特筆すべきは、自分と同レベルの相手のほうが、嫉妬の対象になりやすい
という点だ。
私たちが特に嫉妬を感じるのは、年齢や、職業や、環境や、暮らしぶりが「自分と
似た人たち」に対してだ。プロのテニスプレーヤーはほかのプロテニスプレーヤーと、
優秀なマネージャーはほかの優秀なマネージャーと、作家はほかの作家と、自分を比較
する。
たとえば、ローマ法王とあなたとでは、立場が違いすぎるため、嫉妬を感じることはない。
アレクサンダー大王などもそうだ。
(中略)
そう考えると、「嫉妬に対する対処法」は自然と明らかである。誰とも自分を比べなけ
ればいい。そうすれば、嫉妬とは無縁の人生を送ることができる。他人と自分を比較す
るのを一切やめてしまえばいいのだ。それが嫉妬を感じずにすむ、一番の近道だ。
だが、言うは易く行うは難し。他人と自分を比較せざるをえない状況も、ときにはある。
たとえばカリフォルニア大学では、「職員の給与の公開」が義務づけられている。
ウェブサイトを見れば、同僚がいくらもらっているかを調べられる。
そして当然、給与が平均を下回る職員の仕事に対する満足度は、その事実を知る前より
知った後のほうが低くなる。組織の透明性を保つために、職員の幸福が損なわれている
といえる。
この続きは、次回に。
2024年12月9日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美