お問い合せ

Think clearly シンク・クリアリー ㉞-1

34. 解決よりも、予防をしよう—賢明さとは「予防措置」をほどこすこと

 

□ 人生の困難は「解決する」より「避ける」ほうが早い

 

この章を読みはじめる前に、少し時間をかけて、次の質問について考えてほしい。

賢明さとはなんだろうか?

 

(中略)

 

テレビのクイズ番組で、大規模な音楽コンテストの歴代優勝者の名前と星座をすべて

正解できる人は、頭はいいのだろうが、賢明な人物とはいえない。そうでなければ、

頭の中をそんなくだらない知識でいっぱいにしたりはしないだろう。

たとえクイズの強さがその人の「能力の輪」(第16章参照)の内側にあることだったと

しても(「能力の輪」の中のことに豊富な専門知識が必要なのは事実なのだが)、それを

賢明さと呼ぶのは説得力に欠ける。

そう考えると、賢明さとは知識の蓄積ではないことになる。

「賢明さ」とは、もっと実際的な能力なのだ。人生の舵をとる技術とでもいおうか。

それはまた、人生で起こる困難のほとんどは解決するより避けたほうが早いと気づく

こと。

賢明さの定義とはつまり、困難に対して予防的措置をほどこすことなのである。

 

実際、人生は難しい。問題はあちこちから、雨あられと降ってくる。目の前に予想も

しない溝が突然口を開けたり、行き先をバリケードでふさがれたりしても、あなたには

どうすることもできない。

けれども、どこに危険が潜んでいるかが「予測」できれば、その危険を防止したり、

あらかじめ困難を避けたりして通ることができる。

 

□ 沈没する映画は観ても、沈没する船には乗りたくない

 

ただ、厄介なことがある。「問題を避ける行動」は、魅力に欠けてしまうのだ。

たとえば、AとB、ふたつの「映画のプロット」があったとしよう。

Aの映画では、船は氷山に乗りあげ、ゆっくりと沈みはじめる。船長は使命を果たすべく、

見ていて胸が痛くなるような犠牲的な救出活動を行い、全乗客の命を救い出す。

そして最後まで船に残った船長が救出ボートに乗り込むと同時に、大きな水しぶきを

あげて船は完全に沈没する。

Bの映画では、船長は十分な距離をとって氷山を迂回し、完全な航行を続ける。

—-あなたが映画館で観たいのは、どちらの映画だろう? もちろん、Aに決まっている。

だが、あなたが実際に船に乗っている乗客だとしたら、もちろん、選ぶのはBのほうだ

ろう。

 

このAとBが実際の話だとしたら、その後にはどんなことが起きるだろう?

おそらくAの船長は、トーク番組の出演依頼や、すばらしい条件の出版契約のオファー

を受け、それ以降は船長の職を辞めて、大企業の顧客向けのイベントや幹部ミーティン

グで講演を行い、大金を稼ぐようになる。故郷の町では、彼の名前が通り名につけられ、

彼の子どもたちはこれまでよりずっと父親を誇りに思うようになる。

一方、Bの船長はその後何年も、定年退職するまで障害物を大きく迂回しながら船を

航行させるだろう。ずっと、チャーリー・マンガーのこの処世訓に忠実でありつづける。

「目の前に危険な渦があるのがわかったら、私は六メートルどころじゃなくて、二○○

メートルは間をあけて、それを避けるね」

Bの船長のほうが船長として優秀なのは明らかだ。だが、歓声を送られるのはAの船長だ。

予防措置で達成した成功(もしくは避けられた失敗と言ってもいいが)は、外の世界から

見ると、目立たないからだ。

 

□ プロット

 

映画や小説などを作る際に考える「構成」のこと。 「ストーリー」とは区別され、

「ストーリー」が時間軸で並べられたものに対して、「プロット」は因果関係を

意識して組み立てられ、物語を語るように面白く並べ変えたものをいう。

 

□ チャーリー・マンガー

 

チャーリー・マンガーまたはチャールズ・トーマス・マンガー(Charles Thomas

Munger、 1924年1月1日 – 2023年11月28日[1])は、ウォーレン・バフェットが会長を

務める投資持株会社バークシャー・ハサウェイの副会長。投資家


 

この続きは、次回に。

 

2024年12月13日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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