Think clearly シンク・クリアー ㊼-2
□ 私たちの「期待」をあおるさまざまなもの
人生の「必然」事項と「願望」に続く最後のカテゴリーは、「期待」である。
あなたが大きな失望を感じるとき、その原因の多くは期待をきちんと管理できていない
ことにある。特に「周りの人たち」に対する期待だ。
周りの人たちがあなたの期待に応えてくれる確率は、天気があなたの期待に応えてくれ
る確率と同じぐらいしかない。
あなたの期待は、「外の世界」に対しては非常に限定された力しか持たないが、あなた
の「内側」に対してはとてつもない力がある。
けれども私たちは「期待」という感情に無頓着なため、私たちの「期待」は他人に
いいように利用されてしまう。
広告は私たちの期待をあおるため以外の何ものでもなく、商品を売るときにもやはり
私たちの期待が利用される。
たとえば、あなたに金融商品を売ろうとする銀行員が、その商品の将来的なキャッシュ
フローの複雑な数値を見せながらセールストークを展開するのも、あなたの期待を膨ら
ませるためだ。
また私たちは、頼りない砂の上に期待をつくり上げるだけでなく、ドアも門も開け放して、
周りの人たちまでその期待に巻き込んでしまうことがある。
「期待」について、もっと自覚的になったほうがいい。
□ 期待を一○段階で「評価」する習慣をつける
では、「現実に即した期待」を持つにはどうすればいいのだろう?
まず、人と会う前やデート前、プロジェクトやパーティーや休暇や読書の前など、これ
から何かをしようとするときには必ず、「必然」と「願望」と「期待」をはっきり区別
しよう。
次に「期待」を0から10のあいだで評価する。「0」は悲劇的な出来事を予想している
場合、「10」は一生をかけた夢がかなうと期待している場合である。
それができたら最後に、自分が評価した点から「2点」を差し引き、その数値を頭の中
に定着させる。
これは一○秒とかからないシンプルな作業だが、期待に「数値」をつければ、何の根拠
もないのに感覚だけで期待をつくりあげる、無意識の思考を阻止することができる。
また、この作業を行なった後にあなたの中に残る期待値は、控えめというより、むしろ
適正値を少し下回っているので、失望を避けるための余地もできる。
私はこの三つの手順を一日に数回行うようにしているが、この習慣は私の幸福感の維持
に大きく役立っている。
結論。私たちは「期待」という感情を風船のように扱っている。無計画にどんどん高い
ところまで上昇させてしまうため、ついにはパチンと弾けて、空からしなびた小片に
なって降ってくる。
「必然」と「目標」と「期待」をいっしょくたにするのはやめよう。この三つをはっき
りと区別しよう。それらをきちんと区別できる能力も、よい人生を手にするための条件
のひとつだ。
この続きは、次回に。
2025年2月14日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美