お問い合せ

Think clearly シンク・クリアー ㊽-2

□ ほとんどのものを「無視」してかまわない

 

投資家の中には、シオドア・スタージョンの数十年前に、すでにこの法則を把握して

いた人物もいた。

アメリカ人の投資家、ベンジャミン・グレアムは、一九四九年に書いた古典的名著

『賢明なる投資家』のなかで、株式市場を、分別に欠ける「ミスターマーケット」と

擬人化して描いている。

この「ミスターマーケット」は気分の浮き沈みが激しい性分で、毎日違う価格であなた

に株の売買を持ちかける。極端に楽観的なときもあれば、激しく悲観的なときもあり、

ミスターマーケットの気分はヨーヨーみたいに上下する。

投資家としてのあなたは、ミスターマーケットに持ちかけられた取引を、すぐに受け

入れる必要はない。提示された株価をひとまずやり過ごして、ミスターマーケットが

ありえないほど条件の良い取引を持ちかけてくるまで待てばいい。

たとえば市場が暴落して、ミスターマーケットが有望な銘柄に極端な安値をつけている

ときがそのときだ。ミスターマーケットが持ちかける取引の90パーセントは、いや、

それどころか99パーセントはあっさり無視してかまわない。

 

残念ながら多くの投資家たちは、株価の変動を、無分別にいろいろな価格をわめきちら

す誰かの仕業としては受けとめない。実際に株の価値が上下しているから、価格も変動

するのだと考える。そうして株の「価格」と「価値」を混同し、損失を出してしまうのだ。

あなたに売買を持ちかけるのは、もちろん株式市場だけに限らない。様々な市場がいろ

いろなものをあなたに提供しようと毎日訴えかけている。

新しい製品やゲームや電子機器や映画の宣伝をしたり、面白いユーチューブの動画や

新しいレストランや売り出し中の芸能人を紹介したり、スポーツの試合やニュースや

政治的な意見を発信したり、新しい人と知り合う機会やキャリアのチャンスや、新しい

ライフスタイルや予科の楽しみや休暇を過ごす場所の提案をしたり。

だが、そのほとんどは、果物売り場の腐ったリンゴのように無視してしまってかまわな

い。そのうちの90パーセントは、無意味で単なるがらくたにすぎない。

市場の売り込みがあまりにもうるさい場合は、耳をふさぐか、その場を足早に通り過ぎ

ればいい。市場におけるアピールの強さは、商品の重要性や質のよさや価値を測る物差し

にはならない。

 

□ 本当に価値のあるものは「わずか」である

 

だが、言うは易く行うは難し。ものごとを完全に無視するのは難しい。

その原因は、これまでの多くのケースと同じように、やはり私たちの「過去」にある。

 

(中略)

 

最後に、心の底から正直になって、私たちの「心の内訳」についても考えてみよう。

「スタージョンの法則」は、外の世界にだけでなく、私たちの内側にも当てはまる

はずだ。

私自身に関していえば、私が考えていることの90パーセントは何の役にも立たないし、

私の感情の90パーセントには根拠がなくて、私の願望の90パーセントは馬鹿げている。

ただし、私にはその割合の自覚があるため、私の「内なる産物」のうち、どれを真剣に

とらえ、どれを微笑ましく眺めているだけにとどめておくか、かなり注意深く選別する

ようにしている。

 

結論。すすめられたからといって、くだらないものにいちいち飛びつくのはやめたほう

がいい。そのときそのときの衝動に従うべきではないし、市場に出回っているからと

いって片っ端からすべての電子機器に手を出すものよしたほうがいい。

価値のあるもの、質のよいもの、絶対に必要なものはほんのわずかだ。「スタージョン

の法則」を意識していれば、時間がかなり節約でき、不愉快な思いもしなくてすむ。

不器用な考えとよい考え、役に立たない製品とよい製品、無意味な投資とよい投資の

違いを見きわめよう。くだらないものはくだらないものとしてきちんと認識したほうが

いい。

それからもうひとつ、違いを見定めるときのちょっとしたアドバイスがある。

それがくだらないものかどうか確信が持てないときは、それはくだらないものだと

思って間違いない。これは私の経験上、自信を持っていえる。

 


 

この続きは、次回に。

 

2025年12月19日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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