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Think clearly シンク・クリアー ㊾-2

□ 自信過剰になると、判断ミスを犯しやすくなる

 

ふたつ目は、自分を重要視すればするほど、「自己奉仕バイアス」に陥りやすくなる

からだ。

自己奉仕バイアスに陥ると、何かの目標に到達するために何かを行うのではなく、

自分をよく見せるために行うようになる。有望株だからという理由ではなく、自分の

価値を引き上げるために、魅力的なホテルや最先端技術を扱う企業の株を購入する

投資家などはその典型的な例だろう。

そのうえ、自分を重要視する人には、自分の知識や能力までも「過大評価」する傾向が

あるため(いわゆる自信過剰というやつである)、結果的に、重大な判断ミスも犯しやす

くなる。

三つ目は、自分を重要視していると「敵」をつくってしまうからだ。自分を重要視する

人は、同じように自分自身を重要視している他人を許容できず、彼らを過小評価する。

周りを低く評価しておかなければ、自分が重要な存在だという意識を保てないためだ。

そして遅くともあなたが成功をおさめる頃には、今度はあなだ、自分自身を重要視して

いる人たちに牙をむかれる立場になる。これではとても、よい人生にはならない。

 

覚えておこう。あなたの「エゴ」は、友人ではなく、むしろ敵なのだと。

エゴは意識的に抑えたほうがいい。

もちろん、これは特に新しい考えではない。二五○○年も前からよく知られていることだ。

ストア派の哲学者たちは、すでに行きすぎた自尊心に否定的な立場をとっていたし、

古代ローマでもそう考えられていたことを示す例がある。

ローマ皇帝だったマルクス・アウレリウスは、自らの地位の高さに居心地の悪さを感じ、

日記(『自省録』というタイトルがつけられている)を書きながら、常に謙虚でいるよう

自分を戒めていた。当時のローマ皇帝といえば、地上最高の権力者である。

なかなかできることではない。

哲学の世界だけでなく、宗教の世界にも、人間のエゴを抑えるための思考の道具である。

多くの宗教では、「自尊心」は悪魔の現れと見なされている。

ところが二○○年ほど前から、エゴを抑える文化的なブレーキがゆるくなってきた。

いまでは、誰もが自分自身のイメージをつくりあげるのにブランドマネージャーに

なってしまったかのようだ。

 

○ ブランドマネージャー

 

ブランド・マネージャーは、ブランドの資産としての価値を高めるために、その構築

から管理までの活動全般にわたる広範囲の経営的責任を担います

 

□ 「謙虚」でいたほうが生きやすい理由

 

私たちは誰でも、何十億といる人間のうちのひとりにすぎない。

誰もが偶然どこかに生まれ落ち、偶然どこかで死を迎えるまでのわずかな時間を生きて

いる。そしてこのわずかな時間のあいだに、人間は誰しも(私も含めて)たくさんの愚か

な間違いを犯す。

あなたの名前にちなんだ通りがないのは、かえって喜ぶべきことだ。そんなものがあっ

てもプレッシャーになるだけだからだ。

長い目で見れば、謙虚でいたほうが生きやすい。自信を持つことは誰にでもできるが、

謙虚でいるのは難しい。だが謙虚でいれば地に足のついた考え方ができるので、感情の

波に振り回されることはない。

 

多くの人は、「謙虚でいると損をする」と考えている。ほかの人にいいように利用され

てしまうと感じるのだろう。

だが、実際はその逆だ。明確な外交政策に従ってさえいれば(第12章参照)、謙虚であれ

ばあるほど尊敬される。

もうひとつ、尊敬される人間になるために重要なのは、正直であること、特に、自分自身

に対して正直であることだ。

「行きすぎた自己評価」は現代社会の病だ。私たちはまるで靴にかみついて離れない

犬のように、自分のエゴにしがみついている。だがそんな靴は手放したほうがいい。

かみついたままでいても栄養価がないばかりか、すぐに傷んで妙な味何するようになる

だけだ。


 

この続きは、次回に。

 

2025年2月22日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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