「小さいことにくよくよするな! 」⑤
9. 相手に花をもたせる
気のもちようでふしぎなことが起きる。「自分が、自分が」という思いをすっぱり
捨てて人に花をもたせると穏やかな気分になれるのだ。
人に注目されたいという思いがこうじると、つい「私を見て。私は特別。
私の話はあなたのよりずっとおもしろい」と心の中で言ってしまう。その心の声は
口にこそ出さないまでも、「私の業績はあなたのよりすぐれている」と信じたがって
いる。
注目されたい、尊敬されたい、特別な存在に思われたいといった私たちのエゴは、
しばしば他人を犠牲にしてしまう。
人の話をさえぎったり、一刻も早く自分のことを話したいというエゴは、だれの心にも
巣くっている。程度の差こそあれ、残念ながらほとんどの人がそうだ。話に割り込んで
自分の話題に変えるのは相手の喜びを奪うと同時に、相手とのあいだに距離をつくる。
みんな敗者になってしまう。
こんどの人の話を聞く機会があったら、自分のことを口にする癖がないかどうか確かめ
てみよう。これはけっこう断ち切るのが難しい癖であるが、相手に花をもたせるように
つとめると、楽しいだけではなく心がくつろぐ。
話の途中で「ぼくもそうだったよ」とか「今日なにがあったかわかるかい」と言い
たい気持ちをぐっと抑えて、「それはすごいね」とか「もっと聞きたいな」と言う
だけにする。相手は楽しいばかりかじっくり話を聞いてくれていると感じ、あなたと
競争しなくてもいいんだと気が楽になる。するともっと自信がついて、話はさらに
おもしろくなる。
あなたもまた自分の番を待っていらだつこともなく、ゆったりできるというわけだ。
もちろん、いつも相手をたてるだけではなく、お互いに経験を分かち合って花をもたせ
合うことも必要だ。私が言いたいのは、相手から花をもぎとりたいという衝動を抑える
ことが大切だということだ。
その衝動を抑えると、人から注目されたいという願望は、相手に花をもたせてあげられ
るという静かな自信にとってかわる。
10. いま、この瞬間を生きる
かなりの部分、私たちの心の安定は、いまこの瞬間をどれぐらい生きているかにかかっ
ている。昨日や昨年起きたこと、明日起きるかどうかわからないことに関係なく、あな
たが生きているのはいまのこの瞬間なのだ—-いつも!
言うまでもなく、私たちの多くはさまざまなことを心配しながら生きるというノイロー
ゼの術を身につけている。いまのこの瞬間より過去の問題や将来の不安を優先させた
あげくに、不安や欲求不満や失望にとりつかれてしまう。
その反動として「いつかきっと」いまよりもっとよくなると信じて感謝や幸せを先送り
にしてしまうのだ。ジョン・レノンはこう言った。「人生は、ぼくらがほかの計画を
練っているあいだに過ぎていくんだよ」
私たちがほかの計画を練っているあいだに、子供たちは勝手に育ち、愛する人たちは
引っ越したり他界したりと去っていき、私たちの体型は崩れ、夢が指からすべり落ちて
いく。
人生をくるべき本番の舞台稽古でもあるかのように生きている人が多い。そうではない
のだ。実際、彼なり彼女なりが明日もここにいるという保証はないのだ。
私たちにはいましかない、コントロールできるのはいましかない。いまこの瞬間に焦点
をあてれば不安を押しのけることができる。不安は将来起こるかもしれないことにくよ
くよすることで生まれる—-貧乏になったらどうしよう、子供が非行に走ったらどうし
よう、年とって死んだら—-、不安のタネは月ない。
不安をなだめる最善策は、いま、このときを考えること。マーク・トウェインは言った。
「私は人生の苦難を味わってきたが、実際に起きたのはほんの少しだった」と。
これ以上うまい言い方は私にはできない。
いまこの瞬間を意識する練習をすること。その努力が生き方を左右する。
この続きは、次回に。
2025年5月9日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美