「小さいことにくよくよするな! 」最終
100. 今日が人生最後の日だと思って暮らそう
あなたはいつ死ぬだろうか? 50年後、20年後、10年後、5年後、それとも今日?
私が前回チェックしたとき、だれも答えられなかった。事故死のニュースを聞くたびに
思うことがある。帰宅途中の交通事故で死んだ人は、家族に愛していると告げたかった
のではないか? 彼は幸せな人生を送っていたか? 彼は愛情深かったか? 1つだけはっきり
しているのは、彼のやるべきことの「書類入れ」にはまだたくさんの事項が残されて
いることだけだ。
余命があとどのくらいなのか、私たちは誰も知らない。だが、悲しいことに私たちは
永遠に生きていられるかのように行動する。心の奥で本当にしたいと思っていること–
–愛している人にそう伝える、1人きりの時間を過ごす、親友を訪ねる、心のこもった
手紙を書く、娘と釣りに行く、いい聞き手になる、などなど—–を先送りしてしまう。
自分の行動を正当化するために凝った口実をひねり出し、ほとんどの時間とエネルギーを
どうでもいいことについやしてしまうる
何度も繰り返し言うように、限界を口にすれば、それは自分の限界になるのだ。
一日一日をこれが自分の最後の日であるかのように過ごそう、と言う提案でこの本を
おしまいにしようと思う。それでジタバタしたり責任を放棄したりというのではなく、
人生がどんなに貴重なものか思い起こす手だてにしていただきたい。
私の友達がこう言ったことがある—-「人生は大切すぎて、きまじめにとりすぎたら
もったいないよね」と。あれから10年たったいまは、彼の言うととおりだと思う。
この本が今後ともあなたの役にたつことを心から願っている。もっとも基本的な戦略
「小さなことにくよくよするな!」を、どうか忘れないでほしい。みなさんの幸せを
祈りながら、ここで終わりにしよう。
どうか、自分を大切にしてほしい。
訳者あとがき
「ええっ! これを訳しているの?」
アメリカから一時もどって私の家に泊まっていた姪が、ワープロの前に置かれた本書の
原稿を見てすっとん狂な声をあげた。
「いま、私の周りでこれがブームなの。みんな読んでいる。居間に一冊、ベッドの横に
一冊、トイレに一冊」
本書の初版本のあとがきにこう書き始めたのは、1998年。あれから実に25年たった
今、こうして新たにあとがきを書くことになろうとは夢にも思わなかった。
当時は様々な自己啓発本が流行り始めた頃で、一足早くアメリカでは著書リチャード・
カールソン始め、種々のセラピストたちがラジオやテレビの人生相談番組で活躍していた。
当時から25年たった今日も、私たちの生きにくさの度合は少しも変わっていない。
相変わらず小さいことにくよくよして人生の真の価値を見失いがちな日常を送っている。
カールソンは、そんな私たちに共通する「くよくよグセ」を直して毎日を機嫌よく過ご
せるコツをわかりやすい例と言葉で示してくれる。
この本の特徴は、100の戦略のうちどこから読んでもいい点にある。日めくりのように
一日一ページでもいい。目に留まった見出しの中身を読めば、その日ずっと気分よく
暮らせるはずだ。どの戦略も押し付けがましさは微塵もなく、共感できる内容になって
いる。
思いやり、謙虚な心、忍耐など対人関係に必要な要素はすべて訓練(トレーニング)で
育つと言う著者の主張はとても明確でわかりやすく、現代にも完全に調和している。
それは「人の話を聞くのが苦手で、自分の意見を通したがり、すぐにイライラする
クセ」に悩んだ著者が、セラピストとしての数十年間にクライエントと自分にとって
最も有効な方法で編み出し、協力して実践していった背景があればこそである。
本書は当時全米で500万部を売り上げた大ベストセラーとなり、世界130か国で翻訳
されて今も読み継がれている。
著者のリチャード・カールソンとは奥様のクリスと来日された折にお会いしたが、
本書の語り口そのままの気さくで親しみやすい方だった。本書がベストセラーに
なってからは自分のクリニックの他、トゥディ・ショーなど主要なテレビやラジオ
番組を受け持ち、全米の視聴者に向けてストレス軽減のコツを伝えて圧倒的に支持
されてきた。
だが、次々と発行された続編の宣伝のためサンフランシスコからニューヨークに
向かう機内で突然の発作で死亡と聞いた時のショックは今も忘れられない。
肺動脈塞染症、45歳。
本書のラストの項目「今日が人生最後の日だと思って暮らそう」。
これは著書が身をもって私たちひとりひとりに伝えたかった究極のレッスンではないだ
ろうか。心からご冥福を祈ると共に、短い生涯の中で凝縮された「穏やかで愛情深い人
になる訓練」の教えを遺していただいたことに深く感謝している。
本書の再出版に向けて多大な尽力を賜った株式会社サンマーク出版編集部の梅田直希
さんに、そして本書の日本発売のきっかけを作られた当時の担当編集者・青木由美子
さんにこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
2023年10日末日
小沢瑞穂
新版のための覚え書き(初代担当編集者)
※ 省略
今回で、最終となります。
是非、ご購読いただき、全文をご覧いただければ幸いです。
2025年8月27日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美