書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ⑯
第4章 レモネードの原則
✔︎ 不確実性の削減を重視するコーゼーション
企業のプロセスでは、さまざまな予期せぬ時代に直面します。そのなかには、顧客の
獲得に失敗したり、技術開発がスケジュール通りに進まなかったり、期待した資金調達
ができなかったり、といった不都合な事態もあるでしょう。逆に、思わぬ形でパートナ
ーが現れたり、偶然の出来事をきっかけに想定しなかった方向に事業が成長したり、と
いった好ましい事態もあるかもしれません。それがポジティブなものであれ、ネガティ
ブなものであれ、こうした事前に見通すことが出来ない結果が起こる状況は、起業家が
直面する環境の不確実性の高さを意味しています。
(中略)
それゆえコーゼーションのアプローチでは、行動を起こす前に、市場調査や競合分析、
シミュレーションなど、さまざまな方法によってできる限り綿密に環境を分析し、結果
の不確実性を削減したうえで、最適な計画を立てることが重視されます。
それでも、さまざまな想定外の事態は起こりえますが、それは計画からの逸脱、コント
ロール可能性の喪失を意味するため、コーゼーションの発想ではできるだけ避けたいも
のと考えられるでしょう。
✔︎ 偶発性の活用を重視するエフェクチュエーション
一方で、エフェクチュエーションに基づく起業家は、自らを取り巻く環境の不確実性の
高さを自覚したうえで、それが分析や予測によっては十分に削減できないものであるこ
とも認識しています。そのため、彼らの意思決定では、予期せぬ事態は不可避的に起こ
ることを考え、むしろ起こってしまったそのような事態を前向きに、テコとして活用し
ようとする傾向が見られました。こうした熟達した起業家の思考様式は、「レモネード
(Lemonade)の原則」と呼ばれます。
レモネードという名称は、「人生が酸っぱいレモンを与えるなら、レモネードを作れ
(When Life gives you Lemons, make Lemonade,)という英語の格言に由来するものです。
つまり、美味しい果物を手に入れたいと期待したにもかかわらず、酸っぱくて食べられ
ないレモンしか手に入らないのなら、それは不都合な結果といえますが、だからといっ
て手にしたレモンを捨てたりせずに、酸っぱいレモンはより美味しい飲み物を作る原料
にすれば良いという発想です。
同じように、必ずしも望ましくない予期せぬ事態が起こった場合、熟達した起業家は、
それを避けようとしたり無視したりするかわりに、むしろそれを新たな行動のための
資源として積極的に活用することで、新しい価値あるものやより望ましい成果を生み
出そうとするのです。
この続きは、次回に。
2025年11月7日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美

