お問い合せ

書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ㉒

パートナーは資源だけではなくビジョンをももたらす

 

当初は起業家自身の手持ちの手段から始まったエフェクチュエーションのプロセスは、

新たなパートナーシップが構築されるたびに、「何ができるか」を再定義しながら

そのサイクルを繰り返します。

まず、パートナーの参加によって、彼らの手持ちの手段(資源)がプロジェクトに加わる

ために、手持ちの手段が拡張され、「私は誰か/何を知っているか/誰を知っているか」は、

「私たちは誰か/何を知っているか/誰を知っているか」へと変化します。

それに基づいて、「何ができるか」もまた拡張的に再定義されることになります。

一方でパートナーは、新たな資源だけではなく、新たな目的をもたらすことによっても、

やはり「何ができるか」の方向性に影響を及ぼすことが想定されます。パートナーが

自発的に参画する背景には、彼ら自身の成し遂げたい思いやビジョン、目的があると

考えられるためです。このようにパートナーは、資源とビジョンの両方を新たにもた

らすことで、エフェクチュエーションのプロセス全体の方向性に大きな影響を与え、

その未来を起業家と共創していく役割を担うようになり、その企業の将来性の方向性に

も大きな影響を与えたエピソードを、もう1つの大企業の創業期の事例で見てみましよう。

 

(中略)

 

※ 1946年に東京通信工業株式会社として創業したソニーと大賀典雄氏について、

  記述されております。

     是非、購読をお勧め致します。

 

このエピソードからは、当初は〝クレーマー〟のように見られていた、製品改良のため

のコミットメントを提供する自発的なパートナーが、その後のソニーにとって極めて

重要な役割を果たしただけではなく、当時の組織にはなかった、「音楽のソニー」と

いう新たなビジョンを持ち込んだことがよく理解できるでしょう。

 

キルトづくりに似たエフェクチュエーションのパートナーシップ

 

こうしした特徴を持つエフェクチュエーションのパートナーシップの考え方が、「クレ

イジーキルト」と呼ばれる理由は、それがさまざまな色や柄の小さな布きれ(パッチ)を

縫い合わせて作品を作る、パッチワークキルトづくりにたとえて理解されるためです。

そのなかでも「クレイジーキルト」は、ランダムな形の布切れをつなぎ合わせてユニー

クなデザインが作られるものを指します。

エフェクチュエーションのパートナーシップが「パッチワークキルト」であるのに対して、

コーゼーション的なパートナーシップは、「ジグゾーパズル」にたとえられます。

ジグゾーパズルの場合、完成すべき絵は最初から決まっていて、パートナーシップが

重視されるのは、起業家が一人だけでは全てのピースを持っていない場合に、それを

持っている人にパートナーとして作品作りに参加してもらう必要があるためです。

これに対して、バッチワークキルトの製作過程はまったく異なります。まず、それぞれ

のキルト作家は自分の好みで集めたさまざまなパッチの入った籠と、得意な技術を持って

おり、それらを自らが美しく有意味だと考えるパターンに並べることで、作品をデザイン

していきます。大きな作品は、一人一人が異なる布切れの籠、好み、技術を持つ別の

キルト作家との共同作業によって製作されます。初めに個々の作家が作りたい作品の

イメージを持っていることもあるでしょうが、実際には、誰かが偶然つなぎ合わせた

パターンから新しいイメージが発想され、ともに議論をしながら作品を作っていく結果

として、最初には誰も想像しなかった素晴らしいデザインがしばしば生み出されると

いいます。

エフェクチュエーションもまた、参画するパートナーのそれぞれのコミットメントが

成長していくキルトの1つ1つのパッチを構成し、同時にパートナーとの相互作用を

通じて全体としての新たなビジョンがプロセスの中で獲得されることで、当初は想像も

されなかったデザインを含む、新たな事業や製品、市場などが形作られていくプロセスで

あるといえるでしょう。


 

この続きは、次回に。

 

2025年12月3日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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