書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ㉛
✔︎ 不確実性に対処するパイロットの重要性
予測ではなくコントロールによって望ましい結果を帰結させる、というエフェクチュエーションの
世界観は、なぜ「飛行機のパイロット」と名付けられているのでしょうか。それは、不確実性に
コントロールによって対処することの重要性を、まさに航空機に必ずパイロットが搭乗していると
いう事実が象徴しているためです。
今日、あらゆる航空機には高度なオートパイロットシステム(自動操縦機能)が搭載されているため、
計画通りに進む限りにおいてはオートパイロットによる巡行が可能です。それにもかかわらず必ず
パイロットが搭乗する理由は、たとえば計画された航路を外れてしまった場合など、何らかの不測の
事態が発生した場合でさえ、パイロットが操縦桿を握ることで対処できると考えられているためだと
いえます。
エフェクチュエーションの文脈でパイロットにたとえられるのは、言うまでもなく、プロセス全体を
推進する起業家です。パイロットとしての起業家は、航路通りに進んでいるのか、想定外のことが
起こっているのかを含めて、さまざまな計器の数値や視界の変化から状況を常に察知しながら、操縦桿を
握って飛行機を自らコントロールすることに集中し続けます。言い換えれば、起業家は、未来に起こる
だろう結果の予測や、過去の成功・
失敗ではなく、まさに「いま・ここ」に集中して、望ましい結果を導こうと行動するのです。
こうしたエフェクチュエーションにおけるパイロットの役割とは対照的に、予測に基づいた最適な計画の
策定を重視するコーゼーションの発想は、起こりえる事態を事前に分析・想定することで、オートパイ
ロットシステムを設計しようとする発想に近い、ともいえるかもしれません。そこでは目的地にたどり着く
ための計画策定とシステム設計こそが重要で、パイロットはその実行者にすぎません。
これに対して、エフェクチュエーションの発想では、予期せずして巻き込まれた乱気流のなかでも、実行
可能で、意味ある行動を意思決定し続ける起業家自身の主体的なコントロールこそが、航空機が飛び続ける
ために絶対不可欠な条件になります。
想定外の偶然をテコとして活用する「レモネードの原則」や、パートナーの獲得を通じて新たな方向性を
共創していく「クレイジーキルトの原則」は、ともすれば行き当たりばったりや他人まかせではないか、と
いう誤った印象を与えるかもしれません。しかし、そもそもパイロットが、偶然の出来事や出会いを通じて
創発する新しい可能性を見逃すことなく、そこから意味ある結果を生み出すために常に操縦桿をコントロー
ルし続けるからこそ、こうした外部環境からもたらされる要素を取り込んで、望ましい成果を生み出して
いくことが可能になるといえるでしょう。
□ 帰結
「帰結」とは、物事がある過程を経て最終的に落ち着く結論や結果を意味します。特に、論理的な流れや
必然性を含んだ結末を指すことが多い言葉です。
□ 共創
共創とは、企業が顧客、協力企業、自治体など多様なステークホルダーと協力し、新しい価値を共に創造する
活動です。英語では「Co-creation」と表現され、新規事業の創出や技術・ノウハウの獲得、シナジー効果の
実現に繋がります。
この続きは、次回に。
2025年12月25日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美

