知の巨人 ドラッカーに学ぶ ⑤
教育と学習
・パソコンや通信衛星などの技術革命で学校の学び方や教え方が一変する。
・経済学的視点からの教育が変わる。
・労働集約的な存在から高度に資本集約的な存在となる。
・学校の役割と社会的な位置づけが劇的に変わる。
・すでにアメリカでは、医師、弁護士、技術者、企業経営者は、時代遅れにならない
ために、数年ごとに学校に戻ることが当然となっている。
日本では、そのようなことは知られてさえいないが、これからは成人が学校に戻る
ことが、あらゆる先進国において常識となっていく。
知識社会において学校に求められる要件は五つある。
第一に、読み書き以上の能力、高度の基礎教育を与えなければならない。
第二に、内容に関わる知識とともに方法に関する知識を与えなければならない。
第三に、あらゆる学生、生とに継続学習の習慣を与えなければならない。
第四に、すでに高等教育を受けている者、あるいは何らかの理由で高等教育を
受けられなかった者に門戸を開かなければならない。
第五に、他の機関と協同する教育のパートナーとならなければならない。
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教育は社会全体に広がらなければならない。
起業、政府機関、NPOなどあらゆる組織が学び教えるための機関となる。
万人のための高度の基礎教育が最優先される方法に関する知識、
いままで学校では教えようとさえしなかったものが必要となる。
特に知識社会においては、継続学習の能力や知識のほうが大切である。
学習の習慣が不可欠である。
事業の定義—事業の定義は三つの部分からなる。
第一に、組織を取り巻く環境である。
社会、市場、顧客、技術である。
第二に、組織の使命である。これが組織にとっての成果を明らかにする。
経済や社会に対し、何を貢献するつもりか明らかにする。
第三に、組織の使命を達成するうえで必要な中核的能力(コア・コンピ
タンス)である。これは、組織がリーダーシップを維持していくため
には、いかなる分野で抜きん出なければならないかを明らかにする。
事業の定義は、組織全体に周知徹底しなければならない。組織が若いうちは容易である。
しかし、成功するにつれ組織は、事業の定義を当たり前のこととし、特別の意識をもたなく
なっていく。やがてズサンになる。手を抜くようになり、正しいことよりも都合のよいことを
追いかける。考えることをやめ、疑問を発しなくなる。
答えのほうは覚えていても、何が問題だったのかを忘れる。事業の定義が体質となる。
体質が規律の代わりを務めることはない。事業の定義は規律である。
事業の定義の変革に成功したCEOは多い。彼らは、診断と分析から始める。
彼らは、目標の達成と急速な成長には事業の定義の見直しが不可欠なことを知っている。
予期せぬ失敗を部下の能力や自己のせいにせず、システムの欠陥の兆候と見る。
予期せぬ成功を自らの手柄とせず、自らの前提に変化が生じていると見る。
彼らは、事業の定義の陳腐化は進行性の病、しかも生命に関わる病と見る。
彼らは、外科医の者からの原理すなわち決断の原理を知っている。
それは、進行性の病は先延ばしにしても治らない、思いきった措置が必要であるという原理である。
従業員志向—ドラッカーは世界で初めて従業員を企業にとっての「コスト」ではなく、「資産」として
捉えた人物である。普通の人間は命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、
あまり野心をもたず、何よりまず安全を望んでいる。つまり大衆は凡庸であり、
温情主義をもって報いてやらなければならない。
こうした従業員にやる気を起こさせようとするならば、「アメとムチ」に
よる命令と統制が必要となる。
この続きは、次回に。