企業とは何か-⑯
・自由企業社会がとるべき経済政策
企業を中心とする自由企業体制と安定した強力な社会とは、共存関係にあるだけでなく補完関係にある。
そして何にもまして、利益とは公益に反するどころか、社会の福祉と存続に不可欠のものである。
利益は経済的リスクに対する保険料である。さらにはあらゆる経済発展の基盤となるべき資本形成の
唯一の原資である。
自由企業社会には柱とすべき経済政策が五つある。
第一に、自由企業体制には雇用対策が必要である。
第二に、社会の存続のために政府による集団的な活動とされる領域を明らかに
しておかなければならない。それらの領域では、政府が直接政策を遂行していく必要がある。
第三に、経済活動には、経済効率上、経済合理性すなわち価格に従って組織すべきでありながら、
社会の安定と秩序のためには市場に制約を加えるべき領域である。
第四に、そのようにして規制すべきもののうち、最も重要にして自由企業体制自体にとって最も
必要とされるものが、独占の禁止である。
第五に、すべからく経済政策は、人と社会的資産を保全するものでなければならない。
ということは未来のために資本形成を図るということである。
ベンチャーを支援し資本を供給することである。
・不況を克服できなければ
不況を克服できなければ、社会は、経済発展ではなく経済安定を経済活動の目的として
位置づけることになる。その経済安定は、リスクとチャンスの放棄、変化の禁止、発展の迎制、
技術の凍結によって図られることになる。そのとき、経済活動の目的は、個々の消費者の経済的
欲求の満足ではなくなる。個々の人間の行動を社会的な有効性に変えるメカニズムとしての
利潤動機も、経済合理性を体現する機関としての市場も、ともに社会的な意味を失う。
もはや自由企業体制は、本来の役割を果たすことによって社会的な役割を果たすことをやめる。
そもそも自由企業体制が、社会の欲求に反するかのごとく見られるようになる。同時に、何らかの
方法で不況を克服できるようにならないかぎり、政府が経済の舵をとらざるをえなくなる。
もし大量失業が慢性化するならば、社会の存続のために経済活動の社会主義的な統制が求められる
ようになる。
・世界の平和と安定への貢献
この続きは、次回に。