お問い合せ

「新訳」 イノベーションと起業家精神 上 ③

3 起業家経済の多様性

 ・「インク100社」

    「インク100社」のなかでハイテク企業は四分の一にすぎない。

     四分の三はローテク企業である。これは毎年変わらない。

   1983年は建設不況の年だったが、その年の第一位はアメリカ北西部の太平洋岸にある

       建設会社だった。 第二位はカリフォルニアの家庭用健康器具メーカーだった。 

 ・ハイテクならざる企業

   投資先の最大の収入源となった企業、すなわち1981年から83年にかけての3年間に、売上高、

   利益率ともに最大の成長を見せた企業は、最も日常的で最もハイテク的でない企業、理髪チェーン

    だった。これに続いたのが、歯科チェーン、日曜大工用品メーカー、中小企業向け機械リース会社

        だった。

 ・企業ならざる機関

    さらに事態を複雑にしているのは、この10年から15年間において、かつてはビジネスとみなされて

      いなかった分野の社会的機関が成長していることである。

    その最たるものが医療機関である。昔からある地域の病院は苦境に立たされている。

  これに対して、非常な勢いで成長し繁盛している営利、非営利の病院チェーンがある。

    さらに、急成長を続けている医療機関として、ホスピス、検査診療ラボ、外科手術センター、

      妊産婦ホーム、精神科クリニック、高齢者介護センターなどの専門機関がある。

    経営者管理者育成プログラムや、医師、技術者、弁護士、理学療法士のための研修プログラムなど、

    社会人教育も盛況である。

 

4 エジソンの失敗

 ・マネジメントの技術

 ・ぼろから錦へ

 

5 起業家精神のマネジメント

 ・若者たちに何かが起こった。

   起業家経済の出現は、経済的、技術的現象であると同時に、文化的、社会心理現象である。

   しかし原因が何であるにせよ、その結果はきわめて経済的である。そして、この新しい世代の

   価値観や生き方や行動を可能としたものが、新しい「技術」としてのマネジメントだった。

 ・マネジメントの適用

   まさにアメリカにおいて起業家経済の出現が可能となったのは、次のような分野における

       マネジメントという名の新しい「技術」の適用だった。

(1) 新しい事業(ほとんどの人たちは、マネジメントは既存の事業のためのものとしている)。

(2) 小さな事業(ごく数年前までは、ほとんどの人たちがマネジメントは大企業のためのものと

          していた)。

(3) (医療や教育など)社会的機関の事業(ほとんどの人たちは、マネジメントという言葉を見ると

      企業を連想する)。

(4) 田舎の食堂など、事業とさえ呼べないような事業

(5) イノベーションそのもの(すなわち、人間の欲求とニーズを満たすための機会を探し、実現する

      ための活動)

 ・脱大組織化の始まり

     今日われわれは、すでにある程度マネジメントが行われている大組織よりも、中小の起業家的な

     組織においてこそマネジメントが必要とされ、かつ大きなインパクトをもつことを知っている。

       とくにわれわれは、マネジメントが既存の事業にとってと同じように、新しい起業家的な事業に

     とっても大きな力になることを知っている。

 ・マネジメントの原理と方法

    アメリカ経済を起業家経済たらしめたのは、(科学や発明ではなく)このマネジメントという

        名の 「技術」である。マネジメントという「技術」が、アメリカ社会そのものを起業家社会に

        変えた。しかもマネジメントは、やがてアメリカのみならずあらゆる先進国において、教育、

        医療、政府、政治に対し、 企業や経済に対してよりも大きなインパクトを与える。そして、

        あらゆる先進国社会が切実に必要としている起業家精神そのものが、新しい問題や機会への

        マネジメントの適用なくしては成立しえなくなっている。

        今やイノベーションと起業家精神についても、40年前に経営一般について行われたと同じことが

        必要とされている。すなわち、イノベーションと起業家精神にかかわるマネジメントの原理と方法を

        確立することである。

 

この続きは、次回に。

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